分子栄養学

副腎疲労はチャンスだ!(免疫マップを書いてみよう)

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篠原 岳

医学博士 総合内科専門医・呼吸器内科指導医・アレルギー専門医 臨床分子栄養医学研究会 指導認定医 キネシオロジスト 宮澤医院栄養外来担当 さまざまな不調を、分子栄養学と現代医療とキネシオロジーを合わせて改善させようとしている。 詳しいプロフィールはこちら

どうも、分子栄養医の篠原です。


突然ですが、副腎疲労を治すって難しいですよね。


もちろん、栄養療法を実践することで、元気になられる方も大勢いらっしゃいます。
ところが、栄養療法を一生懸命に頑張っても、効果が頭打ちで悩んでいらっしゃる方も多くいらっしゃることと思います。


副腎疲労は、ざっくりいうと、ストレスで副腎が疲労してしまい、そのため疲れを初めとした色々な症状が出てしまうものです。

栄養療法の効果が頭打ちになってしまうことの一つに、ストレスがバラエティに富みすぎているからではないか、と考えています。
前回は、そのことを心理的逆転という見地でお話いたしました。


副腎疲労においては、自分の中で、副腎疲労を改善させよう、という思いに対抗するものが邪魔しているのでは、と推測しています。


今回は、ハーバード大学教育大学院教授のロバート・キーガン博士が開発した「免疫マップ」(1)というものを用いて、副腎疲労を改善するのに、何が邪魔しているのかをお話してみたいと思います。


少し長くなってしまいましたが、「免疫マップ」を使うと、他人に頼らず自分を深堀りすることができるので、もしかしたら、自分の不調の原因の一端を捕まえることができるかもしれません。

副腎疲労とは

副腎疲労は、多様なストレスによって、腎臓の上にある、副腎という臓器が疲労してしまう状態のことを言います。

副腎は、生命を維持するために大事なホルモン(とくに、コルチゾール)を多く作っているため、副腎が疲労してしまうことによってコルチゾールが作られず、元気がでない、朝起きられない、性欲が落ちたなど様々な症状が出てしまいます。


副腎疲労は、うつ、アトピー、不妊症、喘息など多くの病気の元になっている病態で重要です。
ただし、現時点で病名扱いになっていないので、病院に行っても、原因不明とか精神的なものだとされてしまうことが多いわけです。


栄養療法を用いると、副腎の疲れ具合を検査で見ることも出来ますし、栄養の改善で副腎を元気に戻してあげることも可能になってきました。

多くの方は、栄養療法によって元気を取り戻すことができるようになりました。

しかしながら、頑張って栄養療法を行っているのに、なかなか効果が現れない方もいらっしゃるのも事実です。


栄養療法を提供している側の意見を聞いてみると、それは体(心)が栄養を受け取る状態になっていない、とか体が緊張状態にあるため胃腸が動いていないから栄養素を吸収できていない、とか、治療に対して患者さん自体が主体的にならないと治らない、という風におっしゃられる方もいらっしゃいます。


「免疫マップ」は、複雑な課題にアプローチする方法として開発されました。
これを副腎疲労に応用してみると、副腎疲労を改善させることを、自分自身が見事に阻害していることもある、ということに気づきました。

「免疫マップ」については、後にお話したいと思います。

副腎疲労のストレスチャート®によって、栄養療法が効きにくいのかを推測する

現代社会では、ストレスがとても多様化しています。
副腎に与えるストレスは、何も栄養不足だけではありません。

ストレスの分類は、人によって色々な分け方がされていますが、ここでは4つに分けることにしました。
肉体・構造的ストレス、栄養関連ストレス、環境ストレス、心理・精神的ストレスとしました。

  • 肉体・構造的ストレスは、骨格、歯並びや血管走行の異常などです。
  • 栄養関連ストレスは、栄養欠乏、体の中の炎症、ホルモンの異常、毒素(水銀など)、感染など幅広く含みます。
  • 環境ストレスは、寒暖や家庭環境、電磁波、放射線などのストレスです。
  • 心理・精神的ストレスは、感情やものの考え方などによるストレスです。

副腎疲労の原因が栄養関連ストレスの場合、栄養療法が有効であるわけです。
ところがそれ以外のストレスの場合では、栄養療法では限界があります。

副腎疲労の原因となるストレスが、どこから来ているか、というのを把握しておくことは、栄養療法がどの程度有効かどうかを探るのにとても重要だと思います。

キネシオロジーを使うと、どのストレスが原因となっているかを見つけ、それがどの程度副腎疲労を引き起こしているか類推することができます。

ただし、現段階でキネシオロジーが利用できない場合でも、後述する「免疫マップ」は問題なく行えます。

一般的に、栄養療法単体でとてもよく効く人というのは、このような方です(副腎疲労のストレスチャート®)。

ちなみに、少し前の私の副腎疲労のストレスをチャートにしてみました。

やはり、というか、薄々気づいていましたが、心理・精神的ストレスがダントツに高いようです。

副腎疲労に栄養療法の効果が頭打ちのときに考えること

私のように、栄養関連ストレスに加えて、心理・精神的ストレスがある場合、栄養療法単体だと難しいことが多いのです。

表面上では副腎疲労を克服したいと願っていても、巧妙に自分の心がブレーキをかけていることがあるからです。

「技術的な課題」と「適応を要する課題」

リーダーシップ論の研究者である、ロナルド・ハイフェッツによると、人が直面する課題には2種類あるとのことです(2)。

『リーダーシップとはなにか!』

その課題とは「技術的な課題」と「適応を要する課題」です。

技術的な課題とは

技術的な課題は、問題が自分の外側にあるものです。

例えば、飛行機を目的地まで飛ばす、という課題は、とても難解な行程を含みますが、すべて技術をもって解決できる問題です。

適応を要する課題とは

適応を要する課題は、自分自身が問題の一部になっているものです。

私達がかかえる日常の課題は、ほぼ「適応を要する課題」であるかもしれません。

例えば、夫婦仲を良くする、という課題は、これを行ったら解決する、という技術というものはなかなか見いだせません。

なぜなら、夫婦仲というものの中に、自分自身が入り込んでいるために、課題の中に自分自身がいるわけです。

適応を要する、ということは、自分自身が進化して課題に対して成長することが必要ということです。

そういう複雑な課題に対して、技術的なアプローチは通用しません。

「適応を要する課題」には、適応型アプローチを用いる必要があるわけです。

副腎疲労は、どちらの課題なのか

私の考えでは、副腎疲労は「技術的な課題」でもあり、「適応を要する課題」でもあると思います。

先程の、副腎疲労のストレスチャート®で、栄養関連ストレスのみである、という場合は、「技術的な課題」であり、栄養療法を用いることによって改善が見込まれます。

ただし、他のストレスが複雑に関与している場合は、「適応を要する課題」であり、この方法をしたら解決!のような技術ではびくともしないかもしれません。

そこで、適応型アプローチである、「免疫マップ」を用いてみたら、どうかと考えました。

副腎疲労の免疫マップを書いてみる

免疫マップとは

免疫マップは、ハーバード大学教育大学院教授であるロバート・キーガン博士が開発した、「適応を要する課題」に対するアプローチです(1)。

『なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流 自己変革の理論と実践』

複雑な課題に対処するためには、理屈だけではダメで、考えることと感じることの両方が必要だとロバート・キーガン博士は考えました。

そして、それを明らかにする手法として、シンプルでパワフルな「免疫マップ」という地図を開発しました。

免疫マップの全体像は、以下のように、第1枠・第2枠・第3枠・第4枠から成っていて、至ってシンプルです。

免疫マップの書き方

第1枠 改善目標を書く

自分が心から変えたいと思っているのに、なぜか変えられない目標を書く。

第2枠 改善目標の達成を妨げる、阻害行動を書く

第1枠の改善目標をしたいのに、どのような行動をとっているせいで、改善目標の達成が妨げられているのかを考える。

できるだけ、具体的に書いたほうが、その後の深堀りがしやすくなる。

第3枠 阻害行動をとる裏の目的を書く

第2枠の阻害行動と反対の行動をとったとき、自分にとってどんな不都合なことが起きるかを考える。

強力な固定観念を書く

第3枠の裏の目的をしてしまうのは、自分にどんな強力な固定観念が存在しているからなのかを考える。

(例)私の副腎疲労の免疫マップ

例として、以前の私の副腎疲労の免疫マップを書いてみました。

栄養療法で改善したとはいえ、ちょっと油断すると副腎疲労が出てきてしまう状態です。

ぜひ、皆さまも免疫マップを一緒に書いていただけると、感触が伝わるかと思います。

第3枠、第4枠になってくると、自分を深堀りしていくことになるので、それを提示するのはとても気恥ずかしのですが、参考になればと思い、上げてみます。

第1枠 改善目標を書く(自分が心から変えたいもの)

今回、副腎疲労を改善したいと心から願っているので、ここは素直に「疲労を回復させたい。」と記入しました。

第2枠 阻害行動(第1枠の改善目標の達成を妨げてしまう行動)

疲労を回復させるためには、休息をとるのが一番です。

しかし、阻害行動を考えてみると、疲労を回復させるために休むことをせずに、学会やらセミナーやら、やたらカレンダーを埋めることに熱中していました。

そのようなセミナーに参加し続けることは、疲労回復にとっては逆効果であることは間違いありません。

ですので、私の第2枠は、そのように書きました。

人によっては、阻害行動はいくつも出てくることがありますが、それで結構です。

ただし、具体的に書いたほうがその後が進めやすいです。

さて、治療家たちは、第2枠の阻害行動を辞めるように、というアドバイスをしがちですが、これは全く効果をあらわしません。

私の例でいけば、「セミナーに行き続けるのはやめて、少し休みなさい」というアドバイスは響かない、ということです。

第3枠 裏の目標(第2枠の阻害行動の背中を後押ししている目標)

第3枠まで来ると、急に自分のことを深く見つめることに気づくと思います。

第2枠の阻害行動の裏の目標を書く、ということです。

導き方はまず、第2枠の阻害行動と反対の行動をとったときに起きる、最も不愉快な事態は何か?と考えて、その後に裏の目標に変換する、という行程をとります。

私の場合は、「カレンダーを埋めるほどセミナーに行かない」ことで起きる最も不愉快な事態は、「他の人との知識の差が開いてしまい、自分が劣等感を感じてしまうのが不安」と出てきました(笑)。

また、「セミナーに行かない」ことで、「家でぼーっとしている、という時間はとても人生にとって非生産的な過ごし方で、そんなことをしていたら人生が無駄に終わってしまう不安」も出てきました(笑)。

これを、裏の目標に変換すると、「他の人との知識の差が開くことで、自分が劣等感を感じないようにしたい」、と「家でぼーっとしているような非生産的な過ごし方をすることで、人生が無駄に終わらないようにしたい」となります。

このような、裏の目標があれば、単にゆっくり休んで、というようなアドバイスは全く効かないというのも納得できます。

この第3枠の裏の目標を達成するために、第2枠を行っている、というのも納得できます。 

第4枠 強力な固定観念(第3枠の裏の目標を思う背景にある固定観念)

どのような固定観念があるから、第3枠の裏の目標を考えるのだろうか、と探っていきます。

「他の人との知識の差が開くことで、自分が劣等感を感じないようにしたい」という裏の目的があるのは、「自分が他人よりも劣ってしまうとバカにされてしまう。」という強い固定観念があるから、と出てきました^^;

「家でぼーっとしているような非生産的な過ごし方をすることで、人生が無駄に終わらないようにしたい」という裏の目的があるのは、「何も成し遂げられずにあっという間に人生が終わってしまうと、人生が無意味だ」という強い固定観念も出てきました。

書くのがとても恥ずかしい。。。

ここまでを眺めてみる

ここまで来ると、「自分が他人よりも劣ってしまうととバカにされてしまう」という固定観念があれば、無意識にカレンダーにセミナーを押し込むだろうし、無理に休みを入れたところで、気持ちが焦ってしまうだけということがわかります。

「何も成し遂げられずにあっという間に人生が終わってしまうと、人生が無意味だ」という固定観念があれば、焦ってセミナーを押し込むでしょう(笑)。

そして、その結果、疲労してしまうことになります。。

第1枠が「疲労を回復したい」ということだったのに、随分と奥深くのメカニズムまで到達しました。

他人から見たら、なんのこっちゃというメカニズムかもしれませんが、自分にとっては、強烈に納得できる内容でした。

強力な固定観念は、副腎疲労を回復させたいのに、させない行動をとるという矛盾した行動を無意識に両立させるという免疫的な役割をしています。

副腎疲労のような「適応を要する課題」はこのレベルまで深堀りして、自分を変革させていかないとならない課題のようです。

ここまでは、どのようなメカニズムが横たわっているかの「診断」の部分です。

免疫を克服していく

メカニズムがわかった後、一体どうしたら克服できるのでしょうか?

それは、強力な固定観念が、本当に合っているのかどうかを検討(実験)していきます。

固定観念では、本来とるべきでないとされる行動をあえて実行してみて、どういう結果を招くのかを確認・検証していくという作業を行います。

一気に大チャレンジすることはなく、初めは小さく・安全なところから初めていき、だんだんと規模を大きくしていきます。

私の場合、「自分が他人よりも劣ってしまうとバカにされてしまう」という固定観念が本当に正しいのかを検証するために、セミナーに行く回数を減らして、その結果バカにされるような事態が起きるかどうかを検証します。

今のところ、そのようなことが無いようなので、この固定観念に強く縛られなくてもいいかな、ということが実験を繰り返すことによって体感できてきます。

固定観念が少しかわるだけで、免疫機能が大きくくつがえることがあるわけです。

副腎疲労はチャンスだ!

適応を要する課題を解決していく、ということは、自分を変革していく、つまり知性を上げていくことにほかなりません。

ロバート・キーガン博士は、人間の知性を以下の3段階に分けています。

人間の知性の発達の3段階

  • 第1段階 環境順応型知性 周囲からどのように見られ、どういう役割を期待されるかによって、自分が形成されて、他の人の価値観に身を委ねている。依存体質。
  • 第2段階 自己主導型知性 周囲の状況を客観的に見ることができ、自分自身の価値基準によって判断ができる。自立している者。
  • 第3段階 自己変容型知性 自分の価値基準を客観的に見て、その限界を検討できる。あらゆるシステムが不完全なものと理解している。学ぶことによって導くリーダー。

調査によると、第1段階や、第1と第2の間にいる人がおよそ6割に達し、第2段階以降は4割にしか満たないそうです。第3段階に至っては、7%です。

低い知性であると、「適応を要する課題」を解決することができません。

技術での解決は難しく、知性を上げる事によってのみ克服することができるのです。

よく、依存体質であると副腎疲労の克服が難しい、と言われるのは、知性が第1段階の環境順応型知性にとどまっているため、「適応を要する課題」に対処できないということなのです。

知性を上げる手段として、「免疫マップ」があるというわけです。

自分がなぜ、副腎疲労になったのだろう、と考えると、今まで自分を動かしてきた強い固定観念では、現実に対処しきれなくなったから発症したと考えられるのです。

つまり、今までのパラダイムでは立ち行かなくなったので、新しいパラダイムが必要になったということに直面したということです。

副腎疲労は確かに辛いですが、それは、自分を動かすシステムが古くなり限界が来ていますよ、というお知らせとも考えられるのです。

システムをバージョンアップすれば、人間としての知性が上がり、より豊かな人生が待っているわけです。

もし、私に副腎疲労がなければ、人生をのほほんとして暮らして、そのまま何も考えなかったに違い有りません。

当然、分子栄養学との関わりも無かったはずです。

副腎疲労は、自分の知性を上げるチャンスと思って深く内省してみるのもいいかもしれません。

まとめ

副腎疲労は時として難渋します。

なぜなら副腎疲労を引き起こすストレスは多様化しているからです。

そのため、副腎疲労は、「技術的な課題」ではなく、複雑な「適応を要する課題」であることが多いのです。

「免疫マップ」は「適応を要する課題」にアプローチする方法で、自分の中で何がブレーキを踏んでいるのかを把握することができます。

副腎疲労がなかなか良くならない時には、複雑な課題に技術で対処しようとしていないか、考えてみるのもいいかもしれません。

最後に(免責)

本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。

病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。

基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。

参考文献

(1).ロバート・キーガン『なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流 自己変革の理論と実践』

(2).ロナルド・A・ハイフェッツ『リーダーシップとは何か!』

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