分子栄養学

CBDオイルは喘息に有用

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篠原 岳

東京原宿クリニック院長 医学博士・総合内科専門医・呼吸器内科指導医・アレルギー専門医・臨床分子栄養医学研究会指導認定医・キネシオロジスト・宮澤医院栄養外来担当 さまざまな不調を、分子栄養学と現代医療とキネシオロジーを合わせて改善させようとしている。 詳しいプロフィールはこちら

喘息の根本原因は、空気の通り道である、「気道」に「炎症」が続いていることです。 気道の炎症が続くと、ちょっとした刺激によって気道が縮み、咳や呼吸困難を引き起こします。

そして、その炎症を放っておくと、徐々に気道の構造が変形してしまい、このことを 「リモデリング」と呼びます。

リモデリングはとてもやっかいです。

なぜなら、リモデリングを起こすと治療をしても元に戻らず、咳や呼吸困難がずっと続くことになるからです。 そのため、リモデリングの元になる炎症を防ぐために、通常は吸入ステロイドを用いて気道の炎症を抑えます。 しかしながら、吸入ステロイドは、長い期間使い続けていると、副作用の問題があります。

最近、CBDオイルが喘息に有用であるという報告がなされるようになってきました。 CBDオイルは、大麻草から抽出された違法性のない成分で、近年うつ病や不眠が改善されるなど話題になっています。 CBDオイルはあまり副作用もなく、喘息の炎症やリモデリングにも有効である可能性があるため、ここでご紹介したいと思います。

喘息では、気道の炎症をコントロールすることが大事

喘息は、ガイドラインによると、「気道の慢性炎症」を本態とする病気です(1)。 長い期間、喘息を患っていると、徐々に気道の構造が変化して、元にもどらなくなってしまいます。これが「リモデリング」と呼ばれて、治療しても治らない、難治喘息の原因とも言われています。

ということは、喘息の治療の目標は、気道の炎症を抑えて、気道のリモデリングを起こさないようにすることです。 気道の炎症を抑えるのに使われるものが、吸入のステロイドです。 吸入ステロイドは喘息の症状を抑えることに対してはとても有用で、気道の炎症を制御して、その結果リモデリングを抑制する効果があります。

ところが、デメリットとして副作用の問題があります。

局所的な問題としては、口腔・咽頭のカンジダ症、嗄声(しわがれ声)などは、よくうがいをしても頻繁に出くわします。 全身的な問題としては、内服のステロイドに比べては少ないものの、副腎皮質機能を低下させてしまうことでの副作用も起きる可能性があります。 また、喘息の中には、吸入ステロイドで強力に気道の炎症を抑えても、慢性炎症が改善されない難治性喘息も存在し、それらは治療に難渋します。 そのため、吸入ステロイドとは違った経路の治療戦略が必要となってくるわけです。

CBDオイルとは

近年、大麻草由来のCBDオイルが、抗うつ効果があったり、不眠に対して有用だということで、注目を浴びています。 大麻草成分に含まれる100種類以上の生理活性物質の総称を「カンナビノイド」と呼ばれます。 カンナビノイドの中で、色々な病気に有効であると言われている成分が、THC(テトラヒドロカンナビノール)とCBD(カンナビジオール)という物質です。 そのうち、THCは、向精神作用があり、日本においては法規制により使うことができません。

一方、CBDは向精神作用がなく、法規制を受けることなく使用することができます。 CBDを使用することで、人体に様々な有益な効果をもたらすことができます。 主な効果として、不安を和らげる、鎮痛効果がある、てんかんの発作を抑制する、免疫を制御する、神経難病に効果があるなど、多彩です。

なぜ、このような多彩な効果を人体に及ぼすかというと、人体にも、「エンドカンナビノイドシステム(ECS)」というシステムがあって、自前でカンナビノイドを作り、それによって、食欲、睡眠、疼痛、免疫、老化、記憶などを制御しているからです。 つまり、なにも大麻草を摂取しなくても、人は自前でカンナビノイドを作る能力があって、それによってさまざまな作用を及ぼしているということなのです。

ところが、長期にストレスがかかったり、老化がすすんだりすると、エンドカンナビノイドシステムの働きが悪くなり、様々な病気を発症する引き金になるわけです。 その不足してしまった自前のカンナビノイドを、CBDを摂取することで、エンドカンナビノイドシステムを取り戻そうというわけです。

CBDオイルの喘息への作用

通常の西洋医療のような、大規模な喘息に対するCBDオイルの研究はありません。 しかしながら、人では、喘息に対してCBDオイルが有用であった報告が散見されます。 CBDオイルが、抗炎症作用があるため、喘息に有用なのは理解できるところです。 動物モデルでは、CBDオイルが喘息の抑制に有用であったという報告があります(2)。

その作用機序としては、CBDオイルの抗炎症作用とリモデリング抑制効果と考えられます。

CBDオイルの抗炎症作用

マウスでOVAという卵白アルブミンにより実験的に作られた、喘息モデルで、CBDオイルの効果を試した実験があります。(2) 喘息モデルでは、気管支肺胞洗浄液でのTh2サイトカイン(IL-4, IL-5, Il13)が増加していました。 これは人でも同様にみられ、喘息のアレルギー症状の原因と考えられている炎症と考えられています。 CBDオイルを使用すると、そのサイトカインは全般的に減少して、炎症が改善しました。 CBDは、CB1CB2というレセプターを介してその作用を発現させていると考えられています。 この研究では、やはりCB1CB2レセプターを介して、気道の炎症を軽減させたと考えられました。

CBDオイルのリモデリング抑制効果

また、マウスでの喘息モデルでは、気道への膠原線維が増加して、リモデリングの状態を示していました。 Th2サイトカインにより、線維芽細胞を刺激して、膠原線維の産生が増えるからと考えられています。 CBDオイルを使用すると、気道の膠原線維が減少したのです。 そして、その作用は、CB1CB2レセプターを介していることがわかりました。 結論的には、CBDオイルは、動物モデルで気道の炎症とリモデリングを改善させて、喘息を軽減させました。

CBDオイルのリラックス効果

もともとCBDの効果で大きく言われているのは、抗不安などの精神的な作用で、リラックス効果があります。 難治性喘息の10~30%に抑うつ症状や、不安症状が認められます(3)。 そのため、心理的・精神的要因が喘息の難治化に及ぼす影響は大きいと考えられています。 そのため、喘息では自律訓練法やリラクゼーション法で喘息の自覚症状や呼吸機能の改善が見られるとの報告があります。 よってCBDオイルを使用することで、不安が軽減し、難治性喘息が軽減する可能性もあると考えられます。

CBDオイルの副作用について

では、長期的にCBDオイルを使用しても大丈夫なのでしょうか。 CBDは、大きな副作用もなく、長期的に人間に投与してもみられなかったという報告があります(4)。

まとめ

喘息では、気道の炎症を抑え、リモデリングの進行を防ぐことがとても大事です。 吸入ステロイドは、強力に気道の炎症を抑えますが、一方で無効なこともあり、しばしば喘息が難治化する原因となります。 CBDオイルは、喘息の動物モデルで、気道の炎症を改善し、気道過敏性やリモデリングを軽減することが報告されました。 また、人では不安症状の軽減作用などがあり、ストレスによる喘息の悪化を軽減できる可能性があると考えられます。 長く使用しても目立った副作用が見られないため、CBDオイルは喘息に今までと違った経路での治療法の1つになる可能性があります。

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最後に(免責)

本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。 病態の改善に必要な食事はひとりひとり異なります。 基本的に、主治医に相談しながら進めていただければと思います。

参考文献

(1)喘息予防・管理ガイドライン2018 (2)Cannabidiol reduces airway inflammation and fibrosis in experimental allergic asthma Vuolo F, et al. Eur J Pharmacol. 2019 Jan 15;843:251-259. (3)難治性喘息診断と治療の手引2019 (4)Toxicity of short-term administration of cannabinoids to rhesus monkeys. Rosenkrantz H, Fleischman RW, et al. Toxicol Appl Pharmacol. 1981 Mar 30;58(1):118-31.

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