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こんにちは、東京原宿クリニック 院長 篠原岳です。
「検査をしても異常なし、なのに全身がだるい」「ブレインフォグが取れない」「自律神経失調と言われたけど、原因がわからない」——こうした訴えを持つ患者さんが、近年急増しています。
実は、こうした症状の背景に「上咽頭の慢性炎症」が潜んでいるケースが少なくありません。のどの奥、鼻の突き当たりに位置する上咽頭は、免疫・神経・ホルモンのクロスロードです。ここに慢性的な炎症が続くと、全身に多彩な症状を引き起こします。
この記事では、上咽頭炎のメカニズム、なぜ見落とされやすいか、そして機能性医学的アプローチとしてのEAT(上咽頭擦過療法)と栄養療法の組み合わせについて解説します。
上咽頭炎とは何か
上咽頭という「見えない盲点」
上咽頭(鼻咽腔)は、鼻腔の奥・口蓋垂の裏側に位置し、通常の口腔内視診では直接見えない場所です。免疫学的にはMALT(粘膜関連リンパ組織)が豊富に存在し、外部から侵入するウイルス・細菌・アレルゲンの最前線として機能しています。
そのため慢性的な刺激(感染・アレルギー・乾燥・逆流など)が続くと、ここに持続的な炎症が生じやすくなります。
慢性上咽頭炎の主な症状
慢性上咽頭炎の症状は、局所症状と全身症状に分かれます。
局所症状
– 後鼻漏(鼻水がのどに流れる感覚)
– のどの違和感・異物感
– 鼻づまり・慢性鼻炎
全身症状(見落とされやすい)
– 慢性疲労・倦怠感
– ブレインフォグ(思考力低下・集中困難)
– 頭痛・偏頭痛
– 睡眠障害
– 自律神経症状(動悸・起立性低血圧・冷え)
– 首・肩こり
– 過敏性腸症候群(IBS)との合併
全身症状を引き起こすカスケード
上咽頭は迷走神経(副交感神経の主要幹線)と三叉神経に隣接しています。慢性炎症によりこれらの神経が持続的に刺激されると、自律神経バランスが崩れ、全身の調節機能に影響が及びます。
また上咽頭のMALTから分泌されるTNF-α・IL-6・IL-1βなどの炎症性サイトカインは血流に乗り、血液脳関門を通過して脳内炎症(ニューロインフラメーション)を引き起こします。これがブレインフォグや認知機能低下の原因となっている可能性があります。

上咽頭炎が見落とされてきた理由
なぜ通常の検査では見つからないのか
一般的な血液検査・CRPでは「正常範囲」でも、上咽頭の局所炎症は存在します。この炎症は全身炎症マーカーには反映されにくく、「異常なし」と診断されがちです。
また、耳鼻科での標準的な視診は口腔内・外鼻腔が中心であり、上咽頭の深部観察には鼻咽腔ファイバースコープや後鼻鏡が必要です。こうした検査が省略されると、上咽頭炎はそもそも「確認されない」のです。
一般的な治療法では届かない理由
抗炎症薬・抗アレルギー薬・去痰薬など一般的な治療は「症状の緩和」を目的としており、上咽頭粘膜の根本的な炎症除去には不十分です。点鼻薬も上咽頭深部には届きにくく、慢性化した炎症を持続的に改善するアプローチが必要になります。

科学的根拠に基づくアプローチ
STEP 1: 上咽頭炎の確認と診断
まず上咽頭炎の存在を確認します。当院では以下を組み合わせて評価しています。
– 鼻咽腔ファイバースコープによる上咽頭の直接観察(発赤・浮腫・出血点の確認)が本来望ましいですが、当院にはその設備がないため、次のEATでの出血反応の確認にて行っています。必要な方には、ファイバースコープ設備のある耳鼻科をご紹介しています。
– EATによる出血反応の確認(後述)
– 症状スコアリング(後鼻漏・疲労・ブレインフォグ・自律神経症状)
EATを実施した際に上咽頭から出血があれば、そこに活動性炎症が存在することの証拠となります(「出血=治療が必要な炎症がある」サインです)。
STEP 2: EAT(上咽頭擦過療法)の実施
EAT(Epipharyngeal Abrasive Therapy:上咽頭擦過療法)は、塩化亜鉛溶液を浸した綿棒で上咽頭粘膜を直接擦過する治療法です。日本ではBスポット療法とも呼ばれます。
EATの示唆されている作用メカニズム
– 上咽頭の炎症組織・細菌バイオフィルムの機械的除去
– 塩化亜鉛の局所消炎・収斂効果
– 迷走神経刺激による副交感神経系の活性化(自律神経調整)
– 局所免疫応答のリセット(IgA分泌の正常化)
2025年のレビューでも、EATが迷走神経の活性化を介してHPA軸(視床下部−下垂体−副腎軸)の調整に関与することが示唆されています。
施術頻度の当院の目安
実際には症状と所見を見ながら頻度を調整していますので、あくまでも目安となります。
– 初期: 週1〜2回(計10〜15回)
– 維持: 月1〜2回
出血が減少し、症状が改善するにつれて頻度を落としていきます。
STEP 3: 免疫・炎症の根本対策(栄養療法)
EATで局所炎症を直接取り除くと同時に、全身の炎症体質を改善する栄養療法を並行します。
① ビタミンD3の最適化
ビタミンDは上咽頭を含む気道粘膜のToll様受容体(TLR)を調整し、過剰な炎症応答を抑制します。血中25(OH)D濃度を高めに維持することを目標とします。
② 亜鉛の補充
亜鉛は粘膜上皮の維持・修復と免疫調節に必須です。上咽頭の反復炎症では亜鉛消耗が起きやすく、補充が有効なケースがあります。
③ クエルセチン・ルテオリン
自然界のフラボノイドで、肥満細胞の脱顆粒(ヒスタミン放出)を抑制し、IL-6・TNF-αの産生を下方調整します。上咽頭炎にヒスタミン不耐症が合併している場合に特に検討されることがあります。
④ 腸内環境の修復
上咽頭炎と腸内環境は腸-免疫軸を介して相互作用します。リーキーガットがあると全身炎症が増悪し、上咽頭の炎症回復を妨げます。プロバイオティクス・グルタミン・短鎖脂肪酸産生食材による腸粘膜修復を並行することも検討します。
STEP 4: 迷走神経・自律神経の回復サポート
慢性上咽頭炎では迷走神経トーンが低下していることが多く、EATによる迷走神経刺激に加えて以下のアプローチを組み合わせます。
迷走神経を鍛えるセルフケア
– 腹式呼吸(4-7-8呼吸法): 副交感神経を活性化
– うがい・ハミング: 咽頭の迷走神経枝を直接刺激
– 冷水顔洗い: 迷走神経反射の活性化
– ヨガ・太極拳: HRV(心拍変動)の改善
HPA軸の安定化
EATと栄養療法で炎症が改善すると、慢性ストレスで疲弊していたHPA軸も回復し始めます。コルチゾールリズムの正常化・副腎疲労の改善と連動して取り組むことを検討します。

まとめ
「検査正常なのに全身がだるい」症状の背景に、上咽頭の慢性炎症が潜んでいるケースがあります。機能性医学的なアプローチでは、炎症の根本にある局所病態(上咽頭炎)を確認し、EATによる直接除去と栄養療法・迷走神経ケアを組み合わせることで、多彩な全身症状の改善を目指します。
もし慢性疲労・ブレインフォグ・自律神経症状でお悩みでしたら、ぜひ一度ご相談ください。上咽頭炎の確認から始め、あなたに合ったアプローチをご提案します。
※当院では、慢性上咽頭炎のみの施術は行っておりません。栄養外来に通院されている患者さんに補助的に施行しています。
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(文責)東京原宿クリニック院長 篠原岳











