呼吸器内科

喘息の発作を抑えるためにビタミンDは有効

喘息で治療を受けている人はだんだん増えてきています。
治療では、吸入ステロイドを使用している方も多いでしょう。
喘息は、放っておくと命にもかかわりますし、治療が遅れると治りにくくもなります。
そういう意味で、吸入ステロイドによって、気道の炎症を抑えることは、とても重要です。

しかし、吸入ステロイドを使っても、なかなか症状が安定しないとか、薬が減量できないなどの悩みがあるかと思います。
最近、ビタミンDの研究が進んできていて、喘息を改善させるために重要な役割を果たしていることがわかってきています。
この記事では、現代医療の主軸である吸入ステロイドの恩恵を受けながら、体質改善をして喘息症状をより良く抑えるために、ビタミンDをどのように利用したらいいのかを考えていきます。

喘息治療の問題点

喘息の根本原因は、空気の通り道である気道において、常に炎症が起きていることです。
治療としては吸入ステロイドを用いて、気道の炎症を抑えることによって、症状を抑えるのが一般的です。
しかし、吸入ステロイドを用いている時のみ炎症が抑えられて、やめると炎症が再燃してしまうことが多く、根本治療となるのは難しいのです。
また、しっかりと治療していて症状が安定していても、風邪を引いたときなどに悪化してしまうことがあります。
悪化してしまうと、吸入ステロイドの量を増量したりしなくてはならず、辞めることがさらに難しくなります。

喘息は、吸入ステロイドにより恩恵を受けているのですが、治療中止にすることは難しく、それゆえに、長期にわたる副作用などの心配も出てくるわけです。
吸入ステロイドの長期的な副作用としては、飲むステロイドに比べれば比較的に少ないけれど、全身性作用(クッシング症候群、副腎皮質機能抑制、骨密度低下、白内障、緑内障)などが発現する可能性があります。

喘息の恐怖(発作とリモデリング)

喘息が悪化した場合、単に咳が止まりにくい以上に困ることがあります。
それは、悪化した場合、最悪の場合、気管支が狭くなって息ができなくなり、死に至ることがあるということです。

そうならないためにも、日頃の良好に治療していくことが必須です。
そして、喘息の患者さんが一番気をつけなくてはならないのは、気道の「リモデリング」です。

聞き慣れない方もいるかと思いますが、リモデリングとはなんでしょうか。
喘息が悪化したり、良くなったりを繰り返していると、やがて、悪化したままもとの状態にもどりにくくなることを言います。
顕微鏡で見ると、空気の通り道である気道の壁が厚ぼったくなって、さらにTGFβというサイトカインによって、コラーゲンが気道に付着します。
すると、常に空気の通り道が狭くなってしまうわけです。
ひとたびリモデリングを起こすと治療しても元に戻すことが難しいため、リモデリングは避けなくてはなりません。
吸入ステロイドを使っても、リモデリングを改善させるのは困難です。
リモデリングが起きると、喘息の発作が起きて息苦しいのに、治療しても良くならないという状態になってしまうわけです。

では、喘息の発作を抑えながら、吸入ステロイドの量を減らすことはできないのでしょうか。
また、気道のリモデリングを避ける手立てはないのでしょうか。


ビタミンDは、喘息に対して有効に働くことがわかってきた

最近の研究でビタミンDが喘息の症状を抑えるために有用なことがわかってきました。

ビタミンDとはどんなビタミンでしょうか

ビタミンDとは、脂溶性ビタミンの1種です。
皮膚でコレステロールから紫外線を浴びることによって作られるか、または食事として吸収されて体内に取り込まれます。
通常、十分に日光に浴びていれば、必要なビタミンDの生合成はできていると言われています。

ビタミンDは、腸からのカルシウムやリンの吸収をコントロールして、骨の形成に関わっています。
そのため、骨粗鬆症などの骨の病気に深く関与しています。
最近では、骨の形成以外にも様々な作用がわかってきています。
筋肉を維持したり、遺伝子を発現させたり、抗がん作用、関節リウマチの予防、免疫系の賦活化、インフルエンザの予防など多岐に渡ります。

非常に重要なビタミンなのですが、現代人にビタミンDは不足しがちと言われています。

喘息では、ビタミンDが重要なわけ

これについては、いくつかの研究がなされています。

ビタミンDが少ないと、喘息の悪化のリスクが高い

血液中のビタミンD濃度が低いと、気管支喘息の悪化のリスクが高いことがわかっています。このことは、子供においても、大人においても言えます。(1,2)

ビタミンDを摂取することで、喘息の悪化が減少する

ビタミンDを摂取することによって、喘息の発作を減少させ、悪化を36%減少させたとのまとめ(メタアナリシス)があります(3)。
また、メタアナリシスのサブグループ解析ではビタミンDを摂取する効果は、血液中のビタミンD濃度が低い人(血中25(OH)D濃度< 25nmol/L)において認められました。
そして、ビタミンDの副作用はありませんでした(4)。

ビタミンDが喘息に有効な理由

私が診察している患者さんでは、喘息が悪化する時には、風邪を引いたなど、何らかのウイルス感染がきっかけになることが多いです。
ビタミンDの代謝物は、気道では抗ウイルス効果を持っているので(5)、感染に対して防御できると考えられるのです。

また、風邪などのウイルス感染に続いて、細菌の感染が起こることがありますが、これに対してビタミンDの代謝物は、ビタミンD受容体に働きかけて、抗細菌活性を誘導します(6,7)。

感染が起こった後には、その後に炎症が起きて、それがトリガーとなり喘息の発作が引き起こされます。
ビタミンDは、炎症を抑える効果のあるインターロイキン10を作ったり、炎症を引き起こす物質や、活性酸素を抑えることがわかっています(6,8)。
これらのビタミンDの作用である、抗ウイルス効果・抗細菌活性の誘導・抗炎症効果が合わさって、喘息の発作のリスクを減らすことができると考えられています。

吸入ステロイドとの相性はどうかというと、ビタミンDによるインターロイキン10を介して、吸入ステロイドの効き目が良くなったという報告があります(9,10)。
そして、どうしても避けたい、気道のリモデリングも防げる可能性があることが、基礎研究で出てきました。
ビタミンDは、ラットでWnt/βカテニン シグナル伝達を抑える事により、喘息のリモデリングを抑制するという報告(11)や、マウスの実験では、ビタミンDと吸入ステロイドを一緒に使うことで、喘息のリモデリングを抑制したとのことです(12)。

このように、ビタミンDは、現代医療を否定せずに喘息の悪化を防げる可能性があるのです。

喘息の悪化を抑制するために、どれぐらいのビタミンDが必要なのでしょうか?

喘息の悪化を防ぐための研究で使用されたビタミンDの量は、おおよそ10μg/日(400 IU/日)~100μg/日(4000 IU/日)でした。
ここで、IUは国際単位、1μg = 40 IUです。
これらの研究では、ビタミンDの摂取方法として、サプリメントを使用していました。

体の中のビタミンDを増やすにはどうしたらいいのでしょうか

ビタミンDを増やすために行う方法は3つあります。
それは紫外線を浴びるか、食事で摂るか、サプリメントで摂るかです。

紫外線を浴びて増やす方法(日光にあたる)

紫外線を浴びることによってビタミンDが皮膚でコレステロールから生合成されるというお話をしましたが、実際にはどのぐらいの時間、日光に浴びないとならないのでしょうか。
喘息の悪化を防ぐために用いた研究で用いたサプリメントの量で最低限だった、400 IU/日(10μ/日)を作るためにどのぐらいの時間が必要かを考えてみたいと思います。

400 IU/
日(10μ/日)のうち、食事で約半分摂取できると考えて、ビタミンD5.5μgを生成するのに必要となるビタミンD生成紫外線照射時間を求めた研究があります(13)。
合成されるビタミンDの量は、皮膚のスキンタイプ、着ている服の種類、住んでいる地域(緯度)などに左右されます。
そのため、この研究では、前提として皮膚のスキンタイプを日本人の平均的なSPT:、皮膚の表面積は大人の両手の甲と顔を合わせた面積に相当する600cm2を用い、札幌、つくば、那覇の3地点で、ビタミンD 5.5μgを生成するのに必要となるビタミンD生成紫外線照射時間を求めいています。

まず、夏場7月ですが、ビタミンD5.5μgを産生するために必要な時間は、晴天時の12時では、
札幌 4.6分、 つくば 3.5分、 那覇 2.9分でした。
冬場12月の晴天時の12時では、
札幌 76.4分、 つくば 22.4分、 那覇 7.5分でした。

夏場であれば、昼12時に数分程度、日光に浴びれば必要なビタミンDを生合成することができることがわかりました。
浴び方のポイントは、いかに皮膚障害を起こさずに、ビタミンDを合成するかですので、「できる限り多くの肌を露出」させて、「短時間」で日光を浴びることです。

しかし、冬場ですと、緯度の高い札幌においては、かなり長時間の日光浴が必要となりますし、長時間浴びるとやっかいなことに、日光の浴びすぎにより、皮膚が赤くなったりする直接的な障害がでてしまうため、十分なビタミンDの確保が困難です。
日本において、冬場などの紫外線暴露の少ない季節では、半数の人でビタミンDの欠乏が見られたとのことです。(14)

ちなみに、日焼けサロンはどうか、と聞かれることもありますが、大量の紫外線を長時間浴びると、水疱やシミなどの皮膚障害が起こる可能性があるといわれています。(WHO :Environmental Health Criteria, 1994)

食事から摂る方法

ビタミンDは、食事からでも摂取できます。
ビタミンDの主な供給源は、魚類ときのこ類です。
特に、魚の肝臓に多く含まれているため、たらの肝油は以前よりビタミンDの補給に使われてきました。
文部科学省 日本食品標準成分表2015年版(七訂)によりますと、ビタミンDが多く含まれているものには、以下のようなものがあります。

魚類

さんま開き干し(100g)には 14.0μg=560 IU
まいわし丸干し(100g)には 50.0μg=2000 IU
かたくちいわし煮干し(100g)には 18.0μg=680IU
うなぎ蒲焼(100g)には 19.0μg=760 IU
しまあじ生(100g)には 18.0μ=680 IU
あんこうきも(100g)には 110μg=4400 IU

きのこ類

あらげきくらげ乾燥(100g)には 128.5μ=514 IU
まいたけ乾燥(100g)には 19.8μg=792 IU

紫外線の少ない冬は、特にこれらの食事を意識してみたらいかがでしょうか。

サプリメントで摂る方法

ビタミンDのサプリメントは、紫外線を浴びることが難しい方や、食事からの定期的な摂取が難しい方に適しています。
紫外線を浴びることが難しい方とは、家の外に出れない方、住んでいる地域が高緯度の方、大気汚染が激しい所に住んでいる方、衣服で体を覆っている方、夜間勤務が多い方などです。
ビタミンDには、活性型と非活性型があり、活性型ビタミンDは日本では医薬品です。
ここでは、サプリメントで提供される貯蔵型(非活性型)のビタミンD2もしくは、ビタミンD3を選択して下さい。

ビタミンD3の方が、より効果的という報告があります。

摂取する量は、喘息の増悪を抑制した研究では、400 IU4000 IU /日と開きがあります
血中のビタミンD濃度(25(OH)D)が25nmol/L 以下の方だとよりビタミンDが有効である可能性が高いので、ビタミンDの血中濃度を測定して、摂取を決めたほうがいいでしょう。
測定項目には、非活性型 25(OH)Dと、活性型 1,25(OH)Dがありますが、活性型は半減期が短く、指標とはなりにくいため、非活性型の25(OH)Dの値を参考にして下さい。

では、多く摂ってしまった場合に、副作用の可能性はあるのでしょうか?
過剰摂取すると、血中のカルシウム濃度が高くなり、めまいやふらつき、さらに進行すると、体の中で、石灰化が起こる可能性があります。
日本人において、ビタミンDの耐用上限量(この量を摂っても副作用の報告がない量)は、100μg = 4000 IU/ 日とされています(厚生労働省 日本人の食事摂取基準2015年)。
ですので、この量 (4000 IU / 日)を超えない量で摂った方がいいでしょう。
また、血中ビタミンD濃度と、カルシウムをモニタリングしながらの摂取が良いでしょう。

もちろん、あなたの信頼できる医師に相談しながら行って下さい。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
ビタミンDは、現在行っている治療にはあまり影響をかけず、コストもそれほどかかりません。
そして、様々な働きにより、喘息の発作のリスクを減らしたり、リモデリングを防いだり、吸入ステロイドの感受性を高めたりすることがわかってきました。
喘息の方の体質を変えていくために、希望のある選択肢の一つと考えられます。

最後に

本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。
病態の改善に必要な方法はひとりひとり異なります。
基本的に、主治医に相談しながら進めていただければと思います。

参考文献

(1) Brehm JM, et al. Vitamin D insufficiency and severe asthma exacerbations in Puerto Rican children. Am J Respir Crit Care Med 2012.
(2) Salas NM, et al.  Vitamin D deficiency and adult asthma exacerbations. J Asthma 2014.
(3) Martineau AR, et al. Vitamin D for the management of asthma. Cochrane Database Syst Rev 2016.
(4) Jolliffe DA, et al.Vitamin D supplementation to prevent asthma exacerbations: a systematic review and meta-analysis of individual participant data. Lancet Respir Med. 2017.
(5) Greiller CL, et al. Modulation of the immune response to respiratory viruses by vitamin D. Nutrients 2015.
(6) Coussens AK, et al. Vitamin D accelerates resolution of inflammatory responses during tuberculosis treatment. Proceedings of the National Academy of Sciences 2012.
(7) Martineau AR, et al. IFN-gamma- and TNF-independent vitamin D-inducible human suppression of mycobacteria: the role of cathelicidin LL-37. Journal of Immunology 2007.
(8) Lan N, et al. 25-hydroxyvitamin d3-deficiency enhances oxidative stress and corticosteroid resistance in severe asthma exacerbation. PLoS ONE 2014.
(9) Nanzer AM et al. Calcitriol restores glucocorticoid responsiveness in steroid resistant asthmatics through reduction of IL-17A. Immunology. 2014.
(10) Xystrakis E, et al. Reversing the defective induction of IL-10-secreting regulatory T cells in glucocorticoid-resistant asthma patients. Journal of Clinical Investigation 2006.
(11) Huang Y, et al. Vitamin D alleviates airway remodeling in asthma by down-regulating the activity of Wnt/β-catenin signaling pathway. Int Immunopharmacol. 2019.
(12) Qian J, et al. Budesonide and Calcitriol Synergistically Inhibit Airway Remodeling in Asthmatic Mice. Can Respir J. 2018.
(13) Miyauchi M, et al. The solar exposure time required for vitamin D3 synthesis in the human body estimated by numerical simulation and observation in Japan, Journal of Nutritional Science and Vitaminology, 2013.
(14) Nanri A, et al. Serum 25-hydroxyvitamin d concentrations and season-specific correlates in Japanese adults. J Epidemiol. 2011.

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