分子栄養学

喘息では歯の健康、特に歯周病に注意!

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篠原 岳

東京原宿クリニック院長 医学博士・総合内科専門医・呼吸器内科指導医・アレルギー専門医・臨床分子栄養医学研究会指導認定医・キネシオロジスト・宮澤医院栄養外来担当 さまざまな不調を、分子栄養学と現代医療とキネシオロジーを合わせて改善させようとしている。 詳しいプロフィールはこちら

喘息を良くするためには、体質の改善が必要です。 現代治療である吸入ステロイドで急場をしのいでいる間に、 喘息が悪化しないような体の仕組みを作ることが大事です。

体質の改善の方法は、 いかに体に与えるストレスを減らすか、 ということにつきます。 ストレス減らす作業とは、 自分の喘息に影響を与えている精神的なストレス、 肉体的なストレスや環境的なストレスを見つけて、 それぞれを除去する作業です。

歯の病気、特に歯周病と喘息が関連するとは 普通の診療では考えにくいのですが、 やはり喘息に対して大きなストレスを与えています。

これを期に、歯の健康を考え直して頂ければと思います。

喘息の体質改善には、ストレスの除去が必要

喘息の本態は、気道の炎症です。 炎症を抑えるためには、副腎から産生される 副腎皮質ホルモンが必要になります。

副腎とは、腎臓の上にある小さな臓器ですが、 様々なストレスに対抗して、抗ストレスホルモンを作っています。

ところが、様々なストレスが除去されないでいると、 自分の副腎がいつもフル回転して、ついには疲弊してきてしまいます。 これを「副腎疲労」という概念で呼びます。

副腎疲労になれば、抗ストレスホルモンが作りにくくなりますから、 気道の炎症を抑えることが難しくなるわけです。

外来で喘息で通院していらっしゃる患者さんは、 疲労していることが多いです。

その方にとっては、ストレスが多くて、 その結果、副腎疲労をきたして、 喘息の症状がなかなか抑えられないと考えられるわけです。

ということは、喘息から改善する手立てとして するべきことは、ストレスを減らして、 副腎の負担を減らしてあげることです。

でも、最初から考えうる 全てのストレスを除去することは困難です。 また、個人によってもどのストレスが 一番喘息に悪影響を及ぼしているかも違います。

そうするとなると、大物のストレスから 狙っていった方がいいと考えられます。

副腎に対するストレスで大きいのは、 今までお話してきた、「腸の炎症」、「上咽頭の炎症」があります。

そして、今回お話する、「歯の炎症」も 体にとって大きなストレスになると考えられています。

喘息と歯については、普段の診療では盲点になることが多いですが、 最近では、喘息が歯に与える影響も大きいし、 歯が喘息に与える影響も無視できないこともわかってきています。

歯の炎症として一番問題になるのは、「歯周病」です。 その喘息と歯周病に関してのお話をしたいと思います。

歯周病は喘息の大きなストレス源になりうる

歯周病の怖さとは

歯周病とは何でしょうか。 ただ、歯周病と聞いただけだと、 あまり悪いイメージがしない方も多いかもしれません。 僕もそうでした。

歯周病という言葉の響きだけだと、 治療すれば治るというイメージがあるのではないでしょうか。

歯周病は、初期であれば歯石(プラーク)をとったり、 ブラッシングをすることで治せる場合もあります。

しかし、多くの場合、歯周病の進行は 不可逆的(元にもどらない)と言われています。 歯周病は、歯と歯肉の組織が変質して、さらに 歯の土台である歯槽骨も溶けて破壊される怖い病気なのです。

怖いところは、あまりに進行がゆっくりであることで、 破壊されていることに気づかないでいることです。

そして、歯周病は、その本態が持続している炎症であるため、 歯のみならず、全身への影響が多々あるということを 認識しないとならないのです。

驚くことに、歯周病は日本人の 約6割以上がかかっていると言われています。

歯周病は、炎症の元である

歯は、物を食べる器官です。 歯周病になると、歯自体の破壊が起こりますから、 噛むということが困難になります。

噛めないということは、 食べたものを十分にすりつぶすことができませんので、 その先の胃や腸での栄養の吸収が難しくなってしまいます。

栄養不足は、喘息に対抗するための 栄養素が足りないということになりますから、 とても不利になります。

さらに、それ以上に問題なのは、 歯周病が「炎症」であるということです。˙

歯周病では、細菌と人間の複雑な攻防を経て、 歯とその周りの組織の炎症が進行してしまいます(1)。

歯周病から出される炎症性物質(IL-1βや、TNFαなど)が 全身に回って、歯とは離れたところに病気を作ってしまうのです。

例えば、歯周病があると妊婦は早産のリスクになりますし、 他にも肺炎、がん、認知症や心筋梗塞にも関係があると言われているのです。

歯周病と喘息の関係

喘息では、口の中に問題が起きやすいです。 歯垢が溜まったり、唾液が少なくなります。 唾液が少なくなれば、口の病気もおきやすくなります。

また、喘息では様々な炎症性細胞や炎症性サイトカインが 活動していて、それがさらに歯周病を悪化させてしまいます。

実際に、大人の喘息を対象としたまとめでは、 喘息と歯周病に関連性があることが示されました(2)。

逆の方向、つまり歯周病からみた喘息はどうでしょうか。

歯周病は、多くの原因で成り立っているため、 とても複雑ですが、まず細菌による感染症という面から考えてみます。

歯周病の原因菌とも言われる、 Porphyromonas gingivalisは、 喘息との関連があると言われています(3)。

また、口腔内の病原体や多糖類などが、 気道の炎症や感染を引き起こすと考えられています。 よって、歯周病を改善させるための口腔ケアは、 気道の炎症を抑えることにつながります。

また、歯周病は慢性の炎症という側面もあって、 歯周感染をコントロールすることは、 気道の炎症とつながるため、とても大切だと考えられるのです。

口腔の予防医学(口腔内の衛生、歯周病ケア、 歯周病を悪化させない食事など)が、 喘息の安定に直結します。

つまり、喘息の患者では、厳密に口腔内の衛生を保って、 歯科による定期的な歯周ケアをすることが大事になってきます。

喘息と歯の健康には、多職種連携が必要

きちんと喘息の薬を使用している患者は、 歯周病になりにくいという事実があります。

すると、薬剤師によって、きちんと喘息薬を使えているかを 確認することで、喘息も安定し、歯周病も良くなると考えられます。

しかし、抗喘息薬の筆頭である吸入ステロイドを 長期に使用すると、それはそれで口の中の カンジダが増えるという報告もあり、 そこでまた、歯科による口腔内衛生が必要になってくるのです。

前回お話した、口呼吸も歯周病を悪化させる原因となります。 そのため鼻呼吸の指導も必要でしょう。

免疫力が弱ければ、歯周病も喘息も悪化してしまいます。 医科では、ビタミンDなどで免疫力のサポートも必要でしょう。

歯周病の悪化の予防には、 食生活の見直しも大事です。

過剰な糖質の摂取によっても 歯周病が悪化するからです。

そのためには、栄養士の介入によって、 食生活の改善をすることも必要でしょう。

このように、1人のかかえている 喘息を診療するためには、 多職種が連携をとって考えていく必要があるのです。

まとめ

喘息と歯周病には深い関係があります。 両者は、単に細菌的な結びつきというだけでなく、 慢性炎症や免疫的にお互いに影響しあっています。

喘息治療中の方は、歯周病などの 歯の健康に気をつけるべきです。 また、そのためには、多職種が連携して 一人の患者さんを支えることが大事なのです。

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最後に(免責)

本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。 個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。 病態の改善に必要な食事はひとりひとり異なります。 基本的に、主治医に相談しながら進めていただければと思います。

参考文献

(1) The periodontal war: microbes and immunity. Ebersole JL, Dawson D 3rd, et al. Periodontol 2000. 2017 Oct;75(1):52-115.

(2) Is there an association between asthma and periodontal disease among adults? Systematic review and meta-analysis. Ferreira MKM, et al. Life Sci. 2019 Apr 15;223:74-87.

(3) Porphyromonas gingivalis-stimulated macrophage subsets exhibit differential induction and responsiveness to interleukin-10. Foey AD, et al. Arch Oral Biol. 2017 Jan;73:282-288.

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