分子栄養学

コロナ第2波に備える腸内環境づくり

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篠原 岳

医学博士 総合内科専門医・呼吸器内科指導医・アレルギー専門医 臨床分子栄養医学研究会 指導認定医 キネシオロジスト 宮澤医院栄養外来担当 さまざまな不調を、分子栄養学と現代医療とキネシオロジーを合わせて改善させようとしている。 詳しいプロフィールはこちら

どうも、篠原です。

緊急事態宣言から明けたとしても、街中には、やはりコロナがくすぶっていて、ちょっと油断するとまだ広がる、という状況が続いていいますよね。
(><)

では、このまま行政にいうように、ただ単に自粛するしかないのでしょうか?

自分の体をメンテナンスすれば、第2波、第3波に備えることができますよね。

そのためには、「栄養」「腸内環境」を整えることが先決です。

それも、できるだけ早くから着手したほうがいいですよね。

なぜなら、若干時間がかかるからです。

今回は、コロナ第2波に備えた、腸内環境づくりについてお話したいと思います。

なぜ、腸内環境を整えることが、今大事なのかを免疫の観点からお話いたします。

それでは、始めていきましょう。

腸内環境を整えるべき3つの理由

昨今、何となく腸内環境を整えることが大事だということは、薄々ご存知かもしれません。

腸は栄養を吸収するところなので、腸が機能していないと、体に必要な栄養が足りなくなってしまうからです。

また、腸はウイルスに対する抵抗力を高める、「免疫」にとって、とても重要な場所なのです。

ウイルスに対抗する免疫として、「粘膜免疫」「全身免疫」があって、腸はその2つ共に関与しています。

また、ウイルスと戦って起きた炎症をなるべく沈静化させるための「腸肺軸」も重要です。

ですので、「粘膜免疫」、「全身免疫」、「腸肺軸」の3つをコントロールすることが、ウイルスに対して大事ということになります。

以下では、その3つに関して、説明したいと思います。

腸内環境を整える理由1.粘膜免疫を強くする

粘膜免疫の仕組み

免疫というのは、外から入ってきた病原菌や毒素に対して抵抗力を持つことです。

そして、その種類は大きくわけて、2つあります。

粘膜免疫

まず、ウイルスが体に侵入しようとする時に、私たちの体が最初に侵入させまいと頑張って守っているのが「粘膜免疫」になります。

「粘膜免疫」は、その名の通り、目、気道、腸、口などの粘膜で、外からのウイルスなどの侵入を防いで、体の外に出すことで感染を防ぎます。

いわゆる、防御にあたります。

全身免疫

ウイルスが粘膜免疫を突破してしまうと、体の中に侵入します。

侵入しっぱなしにしておくと、体がやられてしまいます。

そのために、用意されているのが、「全身免疫」になります。

「全身免疫」では、血液やリンパ液の中の免疫を担当する、免疫細胞がウイルスを捕まえて、破壊して、排除する働きをします。

ですので、粘膜免疫も全身免疫も、ウイルスに対抗するためにはとても重要になります。

ここでは、まず、粘膜免疫についてお話したいと思います。

粘膜免疫で必要な、「IgA抗体」

粘膜の構造は、このようになっています。

簡単には、粘膜の細胞の上に、粘液層というものがあって、そこを通過しないと、ウイルスは細胞に到達できないのです。

その粘液層で活躍している免疫物質があります。

それが、「IgA抗体」(アイジーエー抗体)と呼ばれるものです。

IgAはYの字をしていて、それがウイルスにくっつくことで、体に侵入するのを防ぎます。

IgAは、目、腸、気道などの粘膜にたくさん存在して、守ってくれているわけです。

IgAはどのように作られるのでしょうか?

このように、IgAは、粘膜において、ウイルスの侵入を守る、とても大事な働きをしています。

ではこのIgAはどのうようにして作られるのでしょうか?

言葉は少し難しくなってしまうのですが、粘膜のところにある、粘膜関連リンパ組織(MALT;マルト)が、IgAを作るために重要です。

MALTは、気道の粘膜にもありますし、小腸にもあります。

MALTで、外から侵入してきたものを取り込んで、B細胞と呼ばれるリンパ球を刺激します。

すると、B細胞は、IgAを作るようになります。

そして、次に、IgAを作っているB細胞は、そこの場所のMALTから、全身をめぐって、他のMALTへと移動するようになるのです。

つまり、腸のMALTで刺激されたB細胞はIgAを作るようになり、それが気道に移動して、気道での免疫に関わることになる、というわけです(1)。

簡単に言うと、「気道を守るための免疫が、腸で作られる」ということなのです。

IgAを効率よく産生するためには、腸内細菌との関わりが大事。

このように、IgAは多くが腸で作られるために、腸内環境がとても大事になってきます。

過去のマウスの報告では、腸内細菌を全く無くしたマウス(無菌マウス)に、ヒトのビフィズス菌を導入すると、無菌マウスに比べて、IgAがより多く作られました(2)。

プロバイオティクスの投与で、消化管のIgAの産生が促進することも報告されています(3)。

このように、腸内細菌と、IgA産生との間にはとても密接な関係があることがわかっています。

よって、腸内環境を整え、腸内細菌を整えると、腸でIgAがより作られて、それが気道に運ばれて、気道でのウイルスの防御になるというわけです。

腸内環境を整える理由2.全身免疫を制御する

粘膜免疫は、ウイルスに対抗する最初の防御でした。

ウイルスが、粘膜免疫を突破して、体内に入ってきてしまうと、次に重要になるのが「全身免疫」です。

今度は、防御ではなく、免疫細胞による「攻撃」となるわけです。

全身免疫の仕組み

全身免疫の仕組みをここで全て説明しようとすると、とても長くなってしまうので、ここでは、簡単にお話したいと思います。

全身免疫で登場する細胞には、主には、白血球の中の、好中球、B細胞、T細胞、NK細胞、マクロファージがあります。

ウイルスが侵入してくると、まず、自然免疫と呼ばれる細胞達が最初に対応します。

具体的には、好中球やNK細胞、マクロファージといった細胞です。

自然免疫が、ウイルスの情報を得ると、今度は、ヘルパーT細胞というリンパ球に、その情報を渡します。

ヘルパーT細胞は、キラーT細胞や、B細胞を刺激して、さらうウイルスに対して攻撃する、というわけです。

さて、攻撃がそのまま長引いてしまったら、どうなるでしょうか?

戦場が焼け野原になってしまいますよね。

ですから、ある程度攻撃が終わったら、さっさと戦いを終わらせる必要があるのです。

そこで大事になってくるのが、「制御性T細胞」です。

炎症を制御する制御性T細胞

制御性T細胞の働きは、「戦いはもう終わり」という命令を出すことです。

制御性T細胞が働かないと、いつまでたっても戦争が続いて、焼け野原になってしまうわけですね。

ですので、制御性T細胞は、過剰になった免疫反応を抑制する、という役割があるわけです。

そして、制御性T細胞が働くためには、ある栄養素が必要となります。

制御性T細胞は短鎖脂肪酸で増える

その栄養素とは、短鎖脂肪酸です。

短鎖脂肪酸とは、脂肪酸の中で、炭素の数が6個以下のものを指します。

短鎖脂肪酸は、食物繊維を腸内細菌が分解・発酵することによりできます。

短鎖脂肪酸の中でも、酪酸は、大腸のエネルギー源となるので、腸が健康であるためには、必須の栄養素と言えるでしょう。

そして、短鎖脂肪酸は、制御性T細胞を増やすことがわかっています。

まとめますと、腸内環境を整え、腸内細菌がしっかりと働くことで短鎖脂肪酸ができて、制御性T細胞を増やし、過剰な免疫を抑制することができるのです。

そして、短鎖脂肪酸には、「腸肺軸」を介して、またさらに抗炎症効果があるのですが、それは次の項目でお話します。

腸内環境を整える理由3.腸肺軸を強める

腸内細菌によって作られた短鎖脂肪酸のお話の続きです。

短鎖脂肪酸は、腸から吸収されて、血液中に入って、骨髄と呼ばれる血液を作るところにたどりつきます。

そこから、2つの経路により、抗ウイルス作用を示すと考えられています(4)。

経路1 キラーT細胞経由

骨髄に到達した短鎖脂肪酸は、キラーT細胞を活性化させます。

キラーT細胞は、前に出した図にある、直接ウイルスを攻撃するためのリンパ球の一種です。

そうすることによって、肺における抗ウイルス作用を示します。

経路2 単球および樹状細胞の前駆細胞経由

また、短鎖脂肪酸は骨髄で単球および樹状細胞の前駆細胞(MDP)の分化を刺激します。

そして、MDPが増殖すると、白血球の一部である好中球を引き寄せる、好中球走化性因子が低下します。

そうすると、肺の中に好中球が余計に入ってくるのを防ぎます。

余計な好中球が入ってこなくなれば、肺での余分な炎症が抑えられます。

よって、この経路によって肺での抗炎症作用を示すというわけです。

経路1にしても経路2にしても、腸内細菌の活躍による短鎖脂肪酸がとても大事であることがわかります。

このように、腸のように、肺と違うところに住んでいる細菌叢が、肺の免疫に影響を与えるというようなことを「腸肺軸 gut-lung axis」と呼んでいるわけです。

そして、ウイルスに対抗するためには、腸肺軸というものを意識することが大事だと思われます。

良い腸内環境を作るために必要なこと

さて、ウイルスに対抗するためには、良い腸内環境が必要だということが分かったかとおもます。

そして、良い腸内環境は、良い腸内細菌叢を整えることが大事です。

具体的には、以前のブログ(こちら)を参照して下さい。

簡単に言うと、腸内細菌を整えるには、どのようなことが必要なのでしょうか?

腸内細菌が喜ばないものを減らす

腸内細菌は、常に善玉菌と悪玉菌の縄張り争いをしています。

悪玉菌が増えてしまうと、今まで書いてきた栄養素が産生されなくなってしまいます。

悪玉菌は、精製された砂糖が大好きです。

まずは、精製された砂糖を減らすことが大事です。

また、加工食品に入っている食品添加物は、腸内細菌にとって大敵です。

腸内細菌を殺菌してしまうリスクがあるからです。

砂糖、加工食品は避けましょう。

腸内細菌が喜ぶものを増やす

腸内細菌のエサになる食物繊維や、オリゴ糖をとることも良い腸内細菌を増やす手段となります。

特に、ネバネバした水溶性食物繊維は、ごぼうやモロヘイヤに多く含まれています。

このような食材を積極的に摂ることが大事です。

SIBOに気をつけながら、プロバイオティクスを摂る

ただし、安易な腸活は時に危険なことがあります。

水溶性食物繊維やオリゴ糖といったものは、大抵は腸内細菌にとって良い方向に向かいますが、SIBO(シーボ)と呼ばれる状態の場合には、逆にお腹が張ってしまうことが起こります。

SIBOは、小腸内細菌増殖症と言って、普段あまり細菌が住んでいない小腸に異常に細菌が増殖してしまう状態です。

SIBOに関しましては、(こちら)に書いてますので、参考にしてください。

砂糖や加工食品を避けることに関しては、全く問題ありませんが、食物繊維やオリゴ糖などのプレバイオティクスに関しては、一定の理解が必要です。

乳酸菌や酪酸菌などのいわゆるプロバイオティクスも、腸内細菌を整えるには良い方法です。

ただ、こちらも、摂取することで逆にお腹がはるなどするようであれば、SIBOの可能性も出てくるので、注意が必要です。

腸内環境の検査をしてみる

この段階で腸内環境検査をすることはとても意味があると思います。

自分の腸内には、善玉菌が足りているのか、悪玉菌はいないのか、炎症はないのか、などを把握し、必要であれば、対処することが重要です。

総合便検査やSIBO検査は、現時点での腸内環境を把握するためには適していると思います。

まとめ

コロナ第2波を迎えるにあたって、人任せにせず、自分の体調は自分で整えることが大切です。

そのためできる第一歩は、腸内環境の改善です。

腸内環境を改善して、ウイルスに対抗できる体づくりをしましょう。

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最後に(免責)

本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。

病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。

基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。

参考文献

(1)粘膜免疫システムー生体防御の最前線。 清野宏ら、日本耳鼻科学会会報 2011

(2)ビフィズス菌単独定着マウスにおけるIgA抗体産生。 露木重雄ら、日本獣医学会講演要旨集 1987

(3)プレバイオティクスおよびプロバイオティクスの消化管IgA分泌促進作用に関する研究。 中村吉孝ら、腸内細菌学雑誌 2012

(4)Microbes, metabolites, and the gut–lung axis. Anh Thu Dang et al. Mucosal Immunology (2019) 12:843–850;

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