分子栄養学

「除菌成功」と言われたのに、まだ疲れやすい・胃が重い。ピロリ菌除菌後の不調を整理する4ステップ

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篠原 岳

東京原宿クリニック院長 医学博士・総合内科専門医・呼吸器内科指導医・アレルギー専門医・臨床分子栄養医学研究会指導認定医・キネシオロジスト・宮澤医院栄養外来担当 さまざまな不調を、分子栄養学と現代医療とキネシオロジーを合わせて改善させようとしている。 詳しいプロフィールはこちら

診察室で、ときどきこんな相談を受けます。

「ピロリ菌の除菌は成功したと言われました。でも、まだ食後に胃が重くて、疲れやすさも変わらないんです」

除菌という大きな治療を終えたのに、体調が戻らない。すると多くの方が、「本当は菌が残っているのでは」「治療が失敗したのでは」と不安になります。

けれども、症状が続くことと、除菌に失敗していることは同じではありません。長く続いた胃炎や胃粘膜の萎縮、鉄やビタミンB12の不足、抗菌薬後の便通や腸内環境、睡眠や甲状腺など、除菌のあとに別々に確認したいことがあります。

除菌は「終点」ではなく、次の確認の始まり

最初に確かめたいのは、適切な条件で除菌判定が行われたかです。尿素呼気試験や便中抗原検査は除菌判定に有用ですが、検査時期やPPI・P-CAB、抗菌薬の影響で偽陰性が生じることがあります。薬を自己判断で止めず、検査を指示した医師に条件を確認することが大切です。

除菌後に確認したい3つの視点

ここで混同しやすいのが、抗菌薬の「耐性率」と「除菌失敗率」です。日本ではクラリスロマイシン耐性が重要な問題になっていますが、耐性率が35.5%だから35.5%の患者さんが除菌に失敗する、という意味ではありません。実際の結果は、選んだ薬、酸分泌抑制、服薬状況、投与期間、薬剤感受性などで変わります。

除菌が確認できたら、次は胃粘膜の状態を見ます。ピロリ菌による胃酸の変化は一律ではありません。前庭部に炎症が強い場合は胃酸が保たれる、あるいは増えることがあります。一方、胃体部の萎縮が進んでいると胃酸や内因子が減り、鉄や食事由来のビタミンB12の利用に影響する可能性があります。

胃炎の分布で胃酸への影響は異なる

つまり、「除菌後も胃が重いから低胃酸」と決めつけることも、「菌がいないから胃は元通り」と考えることもできません。内視鏡所見、症状、食事量、服薬を一緒に見る必要があります。

疲れやすさは、胃だけの話ではない

鉄やB12が不足すると、疲労、集中力低下、息切れ、舌の違和感、手足のしびれなどにつながることがあります。症状に応じて、血算、フェリチンなどの鉄代謝項目、B12、葉酸、甲状腺、肝機能、腎機能、炎症反応を確認します。

ただし、除菌後の疲れをすべて栄養不足で説明するのも早計です。睡眠不足や睡眠時無呼吸、不安や抑うつ、食事量の不足、薬の影響などでも似た症状は起こります。「ピロリ菌から疲労まで」を一本の線で結ばず、候補を分けて確かめることが大切です。

腹部膨満、ガス、便秘、下痢が続く場合には、抗菌薬後の変化、胃排出、胆汁・膵液、SIBOなども検討します。当院では、腸内環境と代謝背景を見る補助情報としてGI-MAPや有機酸検査(OAT)を使うことがあります。ただし、標準的な除菌判定は尿素呼気試験や便中抗原検査が中心です。GI-MAPやOATだけで除菌の成否やSIBOを確定するものではありません。

4つの順番で整理する

第一に、除菌判定の時期と薬の条件を確認します。第二に、内視鏡で胃炎・萎縮・腸上皮化生などを確認し、疲労があれば鉄やB12を含む栄養状態を評価します。第三に、腹部症状が残る場合は、便通、食事、薬剤、必要に応じて腸内環境や代謝背景を調べます。第四に、食事と栄養補充をその人に合わせて調整します。

ピロリ菌除菌後の不調を整理する4ステップ

除菌後だからといって、厳しい食事制限や多数のサプリメントを一律に始める必要はありません。食事量、タンパク質、脂質、飲酒、喫煙、カフェイン、鎮痛薬の使用などを確認し、不足が見つかった栄養素を必要に応じて補います。

機能性医学の良さは、サプリを増やすことではなく、「いま残っている問題は何か」を順序立てて整理することにあります。

除菌できたのに症状が残ると、不安になるのは自然なことです。けれども、そこで再除菌や厳しい制限へ急ぐ必要はありません。除菌判定、胃粘膜、栄養、腸内環境を一つずつ確認すると、次に見るべき場所が見えてきます。

※この記事は一般的な情報提供を目的とし、個別の診断や治療を代わるものではありません。黒い便、吐血、進行する体重減少、繰り返す嘔吐、強い腹痛がある場合は、早めに医療機関へご相談ください。

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(文責)東京原宿クリニック院長 篠原岳

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