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こんにちは、東京原宿クリニック 院長 篠原岳です。
さっきまで普通に仕事をしていたのに、急に胸がどきどきする。手が震え、落ち着かなくなり、考えがまとまらなくなる。忙しい日の午後や、食事が遅れたときに、そんな経験はありませんか。
不安になる出来事が思い当たらないと、「どうして自分はこんなに緊張しやすいのだろう」と悩んでしまうかもしれません。そこで確認したいのが、症状と食事の関係です。体が血糖を戻そうとする反応が、不安や動悸として感じられる場合があります。
もちろん、突然の動悸には不整脈や甲状腺の病気なども関わります。不安症や睡眠不足による症状もあります。気持ちのケアを続けながら、体の側で何が起きているかも調べる。 血糖を見ることは、そのための手がかりになります。
機能性医学の視点を生かすなら、食事だけで話を終わらせず、食べたものを受け止める胃腸、栄養状態、睡眠、服薬までつなげて考えたいところです。この記事では、血糖を守る仕組みを押さえたうえで、日常を見直す4ステップを紹介します。
血糖が下がったとき、体では何が起こるのか
血糖を戻す主役は、副腎だけではありません
食事で血糖が上がると、膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンは糖を筋肉などに取り込み、食後の血糖を落ち着かせるホルモンです。食後に血糖が上がり、その後に下がること自体は、いつも体の中で起きています。
一方、血糖が下がりすぎる場面では、体は糖を確保する方向へ切り替わります。まずインスリンの分泌が減り、膵臓からはグルカゴンが出ます。グルカゴンは肝臓に働きかけ、蓄えていた糖を放出することや、新たに糖を作ることを促します。
さらに交感神経が働き、副腎から出るアドレナリンも血糖の回復を支えます。アドレナリンは、心拍を速めたり、手の震えや落ち着かなさを生じさせたりするため、この反応を「急に不安が来た」と感じることがあるのです。
流れを簡単にすると、次のようになります。
血糖が下がる → インスリンが減り、グルカゴンやアドレナリンが働く → 肝臓などから糖が供給される
これは、低血糖から体を守るための反応です。コルチゾールや成長ホルモンも関わりますが、こちらは主に、低血糖が長引いたときの糖の確保を支えます。急な血糖回復を、コルチゾールだけが担っているわけではありません。
動悸と「ぼんやり」では、出てくる仕組みが違います
動悸、震え、不安、冷や汗などは、自律神経の反応として現れることがあります。さらに血糖が下がり、脳で使える糖が足りなくなると、集中しづらい、反応が鈍い、考えがまとまらない、といった症状につながります。
ただ、同じような症状は寝不足やカフェインの影響でも出ます。だから、症状が起きた場面と実際の血糖を照らし合わせることが大切です。「不安」という言葉だけでは分からなかったことが、食事や生活の記録と合わせると見えてくる場合があります。
2026年7月7日に『Biology』誌で公開されたナラティブレビューも、血糖調節、炎症、神経・ホルモン反応、精神症状の関係を取り上げています。これは既存の研究を整理した総説です。個々のつながりを考える参考にはなりますが、腸から不安までの一連の流れをひとつの試験で確かめた研究ではありません。本記事でも、確かな生理学と、まだ研究が進んでいる部分を分けて考えます。

血糖の不調で、遠回りしやすいこと
「甘いものを食べたら楽になった」を、観察の出発点に
甘いもので楽になった経験は、受診時に伝えてほしい情報です。ただ、空腹が満たされたことや、休憩できたことが助けになっている場合もあります。その経験だけで原因を決めず、何を食べたあとに、どんな症状が出たのかを確かめていきます。
また、食事代わりに甘い飲み物や菓子を取り、つらくなるとまた甘いものを足す、という過ごし方では、食事全体のバランスが崩れやすくなります。まず変えたいのは、糖を一切取らないことよりも、空腹を甘いものだけで埋める習慣です。
健診の数値と、症状が出たときの数値は別に見る
空腹時血糖やHbA1cは、糖代謝を知る大切な検査です。ただし、それだけで症状が出た瞬間の血糖までは分かりません。
反対に、血糖のグラフに山と谷があるだけで、病気ともいえません。大切なのは、実際に低血糖が起きているか、症状と重なっているかです。「どれだけ下がったか」だけでなく、「どこまで下がったか」も確認します。
科学的根拠に基づくアプローチ
STEP 1:症状と食事の関係を、記録して確かめる
最初は、食べたもの、症状が始まった場面、その日の睡眠や飲み物を簡単にメモします。たとえば「朝はコーヒーだけ」「昼は麺だけで済ませた」「会議の途中で手が震えた」といった記録です。細かい栄養計算より、普段の過ごし方が伝わるメモが役立ちます。
低血糖の評価では、「症状がある」「そのとき血糖が低い」「血糖が戻ると症状が改善する」という組み合わせを確認します。医療機関では、症状が出る時間帯、糖尿病の薬、飲酒、胃の手術歴、肝臓や腎臓の病気なども踏まえて検査を選びます。
CGM(持続グルコース測定)は、食事や運動と糖の変化を見比べる助けになります。ただし、測っているのは血液ではなく、細胞の間にある液体の糖です。血糖との時間差があり、低い領域では誤差も出やすくなります。寝ている間にセンサーが圧迫され、低く表示されることもあります。
低値が出たら、症状を確認し、必要に応じて指先での測定などと照らし合わせます。正式な診断には、信頼できる方法で測った血漿の糖の値が必要です。CGMは「症状が起きる流れを探す道具」として使うと役立ちます。
動悸が続くなら心電図、疲労が強ければ貧血や甲状腺など、血糖以外の確認も進めます。パニック障害の治療を受けている方は、その治療を続けながら身体面も相談してください。
STEP 2:糖質を減らす前に、食事の組み合わせを変える
忙しいと、パンとコーヒー、麺だけ、お菓子といった食事になりがちです。そこに、たんぱく質や食物繊維を含む食品を足してみます。
おにぎりだけなら、卵や魚、豆腐などを添える。
麺だけなら、肉や卵、野菜の入ったものを選ぶ。
甘い飲み物で空腹をしのいでいるなら、食事や補食を取れるように準備する。
野菜やたんぱく質から食べ始める方法もありますが、順番にこだわって必要な量を食べられなくなっては困ります。胃もたれしやすい方は、一度に無理をせず、食べやすい量と組み合わせを探します。
食事の間隔が空くと症状が出る方では、少量の補食が役立つ場合があります。全員が同じ回数で食べる必要はありません。症状と測定した血糖のパターンを見ながら、食事量やタイミングを調整します。極端な糖質制限によるエネルギー不足にも気をつけましょう。
なお、実際の低血糖への応急対応は、日頃の食事づくりとは別です。意識がはっきりして飲み込める場合は、ブドウ糖など速やかに吸収される糖で対応します。卵やナッツは、その代わりにはなりません。意識がおかしい、飲み込めない場合は無理に飲食させず、救急対応が必要です。

STEP 3:腸の調子と「十分に食べられているか」を見る
ここで、機能性医学の広い視点が生きてきます。食事を整えようとしても、お腹が張る、下痢をする、胃が重いといった症状があると、食べる量や種類が少なくなりがちです。「腸によさそうなもの」を選ぶうちに、主食やたんぱく質まで足りなくなっている場合もあります。
まずは、何を食べるとつらいのか、便通はどうか、体重や食事量が変わっていないかを確認します。疲労があれば、血算やフェリチンなどの栄養評価も、症状に応じて組み合わせます。胃腸の症状を軽くし、無理なく食べられる状態に近づけることが、生活を立て直す助けになります。
腸は消化吸収だけでなく、食後のホルモン分泌にも関わっています。腸内細菌が作る短鎖脂肪酸と糖代謝の関係も研究されています。この視点は大切ですが、腸内細菌の検査結果から、突然の不安の原因まで一直線に結びつけることはできません。
当院では、消化管症状や経過に応じて、GI-MAPやOAT(尿中有機酸検査)も背景を考える補助情報として使います。GI-MAPでは便中の微生物や関連指標、OATでは尿中の代謝物を見ながら、食事、栄養、消化管の状態を検討します。血糖の評価は症状時の測定を軸にし、これらの検査は「食べにくさや体調不良の背景を広く考える」ために組み合わせます。
検査を増やすことより、結果が食事や治療のどんな判断につながるかが重要です。食事制限やサプリメントを一度に増やさず、必要性が分かったものから調整します。
STEP 4:睡眠・カフェイン・ストレスも一緒に調整する
寝不足の翌日は、食事が乱れたり、眠気をコーヒーで乗り切ろうとしたりしがちです。睡眠不足はインスリンの働きにも影響します。食事だけを頑張ってもうまくいかないときは、休息を取れる生活になっているかも振り返ってください。
朝は外の光を浴び、夜は照明や画面の明るさを落とす。仕事が続く日は、食事を取る時間を先に確保する。コーヒーのあとに動悸が出る方は、量やタイミングを見直す。小さな調整でも、繰り返しやすいものを選びます。
夜中の動悸や寝汗も、血糖だけでなく、飲酒、睡眠時無呼吸、不安、薬の影響などを確認します。「夜に起きるから低血糖」「疲れるから副腎の問題」と急いで名前をつけるより、睡眠中に何が起きているかを確かめるほうが、対策につながります。
体調が安定しているときは、軽い散歩や無理のない筋力トレーニングも選択肢です。震えやふらつきが出ている最中は、運動で乗り切ろうとせず、いったん休んで対応してください。
振り返るときは、グラフの形だけでなく、「午後も仕事を続けやすくなったか」「動悸の回数が減ったか」「安心して食べられるものが増えたか」も見ていきます。食事、睡眠、必要な治療を調整しながら、暮らしの中で楽になった点を確かめます。

まとめ
突然の不安や動悸を感じたとき、食事と血糖の関係も確認する価値があります。血糖が下がりすぎると、インスリンの分泌が減り、グルカゴンやアドレナリンが糖を確保しようと働きます。その防御反応が、落ち着かなさや震えとして感じられる場合があります。
取り組む順番は、症状が出る場面を記録すること、食事の組み合わせを整えること、腸と栄養の状態を確認すること、睡眠や刺激物も見直すことです。必要な心理的ケアや薬物療法も、並行して続けます。
まずは、つらくなった日の食事と睡眠をメモしてみてください。「自分は不安になりやすい」で終わっていた経験が、受診時に相談できる具体的な情報になります。症状が繰り返すときは、その記録を持って医療機関でご相談ください。
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※本プログラムは医療行為、診断、治療、または症状の改善を目的としたものではありません。
免責事項
この情報は医療・健康に関する情報提供を目的としたものです。
特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。
体調に関するご判断は必ず医療機関にご相談ください。
(文責)東京原宿クリニック院長 篠原岳











