分子栄養学

口臭・体臭がケアしても消えない理由——口腔・皮膚だけでなく「腸内環境」から考える機能性医学的4ステップ

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篠原 岳

東京原宿クリニック院長 医学博士・総合内科専門医・呼吸器内科指導医・アレルギー専門医・臨床分子栄養医学研究会指導認定医・キネシオロジスト・宮澤医院栄養外来担当 さまざまな不調を、分子栄養学と現代医療とキネシオロジーを合わせて改善させようとしている。 詳しいプロフィールはこちら

こんにちは、東京原宿クリニック 院長 篠原岳です。

毎朝歯を磨いて、マウスウォッシュも使って——それでも一日中、自分の口臭が気になって仕方ない。そんなご経験はないでしょうか。

体臭も同様です。シャワーを浴びたすぐ後なのに、なんとなく自分のニオイが気になってしまう。「もっとちゃんとケアしなければ」と思い、デオドラントを替えたり、歯医者でクリーニングを受けたりしても、根本的には変わらない。そんな方が、私のクリニックにも多くいらっしゃいます。

まず大切なことをお伝えします。 口臭の多くは、舌苔・歯周病・虫歯・口腔乾燥・扁桃膿栓・副鼻腔炎など、口腔・耳鼻科領域の原因から起こります。まずは歯科・耳鼻科的な評価が重要です。

そのうえで、口腔ケアを丁寧に続けても改善しない、鼻からの呼気にもにおいがある、膨満感・便通異常・逆流・食後不調を伴う場合には、腸内環境の関与を考える価値があります。

機能性医学の視点では、こうしたケアで改善しない一部の口臭・体臭に、腸内環境が関係している可能性があります。

今日は「腸-皮膚軸(Gut-Skin Axis)」という概念から、口腔ケアで改善しない口臭・体臭の背景と機能性医学的なアプローチをお伝えします。

口臭・体臭とはなにか——腸内環境から考える

「東アジア人の多くは体臭が出にくい遺伝型」なのに、なぜ消えない?

日本人を含む東アジア人では、ABCC11遺伝子(rs17822931)の変異により、アポクリン汗腺由来の典型的な腋臭が出にくい人が多いことが知られています。日本人では乾性耳垢型が約77%と報告されており(全国調査)、東アジア人全体では80〜95%とされる集団もあります(ScienceDirect, NBC News 2024)。

このABCC11遺伝子変異を持つ人は、アポクリン汗腺からの腋臭産生物質をほとんど分泌しない傾向があります。欧米人の多くが「腋臭産生型」であるのとは対照的です。

ただし、ABCC11変異が軽減するのは主に腋臭(アポクリン臭)の部分です。加齢臭・足臭・口臭・頭皮臭については別のメカニズムが関与します。

「遺伝的に腋臭が少ないはずなのに、口臭や体全体のニオイが気になる」——そのギャップを考えるうえで、腸内環境の関与を検討する価値があります。

体臭・口臭に関係する「3つの揮発性ガス」

腸内細菌が産生する揮発性ガスのうち、口臭・体臭と特に関連している可能性が報告されているものが3つあります。

① 硫化水素(H₂S)

腸内の嫌気性細菌、特にDesulfovibrio(デサルフォビブリオ)属Bilophila wadsworthiaなどの硫酸還元菌が産生します。

口腔内細菌も硫化水素を産生しますが、腸管バリアが低下(リーキーガット)しているとき、腸由来の硫化水素が血流に吸収され、肺から呼気として排出される可能性が報告されています(MDPI 2025)。

② メチルメルカプタン(CH₃SH)

SIBO(小腸内細菌異常増殖症)や腸カンジダ過剰増殖時に産生される揮発性硫黄化合物(VSC)のひとつです。

口腔内細菌由来のものも多いことに注意が必要ですが、腸由来のメチルメルカプタンが口臭に関係する可能性が一部の研究で示されています。

③ ジメチルスルフィド(DMS)

腸の細胞では代謝・分解されにくく、血流→肺→呼気という経路で排出されやすいとされています。血液由来・腸由来の口臭で特に重要視されており、SIBO患者で多く報告されています。

これらのガスはマウスウォッシュや歯磨きでは到達できない腸の深部からも発生している可能性があります。

腸-皮膚軸(Gut-Skin Axis)——腸と皮膚の双方向ネットワーク

腸と皮膚は、免疫・代謝・神経系を介した双方向のネットワークで結ばれています。

2025年に学術誌 Tandfonline に掲載されたレビュー論文では、腸内細菌叢の変化が免疫シグナルや代謝産物を介して皮膚のホメオスタシスに影響を与える可能性が示されています。ただしこのレビューで対象とされているのは主にアトピー性皮膚炎・乾癬・ざ瘡などの炎症性皮膚疾患であり、「体臭」を直接説明するエビデンスとしてはまだ十分とは言えません。

また2026年、ワシントン大学の研究チームが Cell Metabolism に発表した研究では、腸内細菌由来の揮発性有機化合物(VOC)が呼気に反映される可能性が示されました。これは腸内細菌叢の非侵襲的評価法としての意義が大きく、腸と体臭・口臭の間接的な関与を示唆する知見として注目されています。

「腸を整えることが、口腔・皮膚の環境にも波及する可能性がある」——現時点では、そのように考えるための傍証が積み上がっている段階です。

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口臭・体臭についてよくある誤解

誤解①「毎日の口腔ケアをしていれば、口臭は防げる」

口腔ケアは口臭対策の基本であり、口腔内由来の口臭(歯周病・舌苔・唾液分泌低下など)に対しては非常に重要です。

しかし一部の方では、歯科・耳鼻科での精査を受けても原因が特定できず、口腔ケアを続けても口臭が改善しない「特発性口臭」と呼ばれるケースがあります。このような場合、腸内環境からのアプローチが補助的に役立つ可能性があります。

口腔ケアを否定するのではなく、「口腔ケアで改善しない場合に、次に何を評価するか」という視点が大切です。

誤解②「体臭が気になるなら、シャワーの回数を増やせばいい」

体臭の発生には、皮膚常在菌の働きが深く関わっています。

アポクリン汗腺から分泌された無臭の前駆体物質を、Staphylococcus hominis などの皮膚常在菌が代謝することで、チオアルコール(3M3SH など)という臭気物質が発生します。シャワーで表面の菌を一時的に除去しても、皮膚環境そのものが変わらなければ同じプロセスが繰り返されます。

根本的なアプローチとして、皮膚常在菌のバランスや腸内環境を整えることが、体臭改善への補助的な手段となる可能性があります。

誤解③「消臭サプリを飲めばすぐに体臭・口臭は消える」

市販の消臭サプリの多くは、クロロフィルや植物抽出物など「マスキング(臭いの上書き)」を目的としたものです。

原因となる腸内環境の乱れや代謝の問題が残ったままでは、根本的な改善には限界があります。サプリは補助手段と位置づけ、まず原因の評価を行うことが大切です。

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科学的根拠に基づくアプローチ

STEP 1:まず口腔・耳鼻科での評価を——原因不明な場合は腸内環境の評価を検討する

口臭の80〜90%は口腔内由来とされています。まず歯科・歯周科での精査(歯周病・虫歯・舌苔・唾液分泌の評価)を行い、必要に応じて耳鼻咽喉科での確認(副鼻腔炎・扁桃炎など)も重要です。

これらで原因が特定できず、口腔ケアを継続しても改善しない場合に、腸内環境の評価を検討します。

腸内細菌叢の評価について

便中DNAを定量解析する GI-MAP 検査は、大腸の細菌叢・カンジダ・炎症マーカーを評価する検査です。ただしこの検査は、小腸の細菌過剰増殖(SIBO)を直接診断することはできません。

SIBOの評価には、水素・メタン・硫化水素の呼気検査が一般的に使用されます。陽性の目安として、国際的なガイドラインでは水素(H₂):90分以内に20ppm以上の上昇メタン(CH₄):10ppm以上が参考にされています。硫化水素(H₂S)の呼気検査はまだ標準化が進んでいる段階で、商業検査では3ppm以上を参考値とする場合があります。

2024年に報告された後ろ向き観察研究では、特発性口臭と診断された162例においてSIBO陽性率が高く、プロバイオティクス(Bifidobacterium triple viable capsule)投与後にSIBO陰性化と口臭改善が関連したことが示されています。ただし、この研究は単施設・後ろ向きのデザインであり、因果関係の証明にはさらなる研究が必要です。

STEP 2:腸内環境の乱れへの対応を医師のもとで検討する

SIBOや腸内の過剰発酵が疑われる場合、食事内容の見直し(発酵食品・糖質の過剰摂取の抑制)が補助的に有用な場合があります。

薬物療法については、リファキシミン(抗菌薬)が腸管内で作用するSIBO治療薬として使用されることがあります。H₂S産生菌が優勢な場合には、ビスマス製剤が硫化水素産生を抑制する可能性が示唆されていますが、臨床エビデンスはまだ発展途上です。必ず医師の指導のもとで行うことが前提となります。

ハーブ系サプリ(ベルベリンオレガノオイルなど)については、一部の研究で腸内環境への関与が報告されていますが、製剤の複合使用での研究が中心であり、単剤での有効性が独立して確立されているわけではありません。使用を検討する場合は専門医との相談を推奨します。

腸内でカンジダ(真菌)が過剰に増殖すると、代謝副産物としてアセトアルデヒドが産生されることがあります。ただし、腸カンジダ過剰が一般的な口臭・体臭の主因となるかについては、現時点では根拠が限られており、あくまで複合的な要因の一つとして考える視点が妥当です。

STEP 3:腸管バリアを支える栄養素を整える

腸内環境の乱れが続くと、腸管上皮のバリア機能(タイトジャンクション)が低下し、腸管透過性が亢進する可能性があります。この「リーキーガット」状態が持続すると、代謝産物が体循環に流入し、全身の炎症を介した体臭・口臭の一因となる可能性があります。

腸管バリアをサポートする栄養素として、以下が検討されることがあります(個人差があり、使用は専門家の指導のもとで):

L-グルタミン:腸管上皮細胞のエネルギー基質として、腸管バリアの維持に関与すると報告されています
亜鉛カルノシン:腸管粘膜の保護作用に関する研究があります
ビタミンA:腸管上皮細胞のターンオーバーや粘膜免疫に関与します
タンパク質・コラーゲン前駆体:腸管上皮の修復に必要な材料として重要です

プロバイオティクスについては、複数のメタ解析において短期的な官能スコアやVSC(揮発性硫黄化合物)の改善が示されていますが、研究数・症例数・異質性の面でまだ限界があります。長期的な効果については、さらなるエビデンスの蓄積が待たれます。

STEP 4:代謝・排泄を支える栄養状態を整える

硫化水素・メチルメルカプタン・ジメチルスルフィドなどの揮発性硫黄化合物(VSC)は、体内の解毒・メチル化代謝とも関わっています。

以下の栄養素が、代謝・排泄プロセスの補助として検討されることがあります:

NAC(N-アセチルシステイン):グルタチオンの前駆体として肝臓の解毒機能をサポートする可能性があります
グルタチオン(リポソーム型):主要な抗酸化物質として、代謝副産物の処理を補助する可能性があります
マグネシウムグリシネート:腸の蠕動運動を補助し、便秘による腸内発酵の亢進を抑制する可能性があります。吸収効率の観点からキレート型(グリシネート形態)が推奨されることが多いです
ビタミンB群(特にP-5-P:ピリドキサール-5-リン酸):代謝酵素の補酵素として、アミノ酸・硫黄代謝に関与します。ビタミンB6は活性型であるP-5-P形態の方が直接利用可能です

これらの栄養素は単独での効果を強調するよりも、便通の確保・睡眠・タンパク質摂取・抗酸化栄養の充足を整えることが、代謝負荷の軽減につながります。

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まとめ

口臭・体臭がケアしても改善しない場合、それはあなたのケア不足ではないかもしれません。口腔・皮膚だけでなく、「腸内環境」という視点を加えることで、新たな可能性が示される場合があります。

口臭の80〜90%は口腔内由来。まず歯科・耳鼻科での精査が大前提
ABCC11遺伝子の変異により日本人を含む東アジア人は腋臭が出にくい傾向がある一方、腸由来・皮膚常在菌由来の臭い成分は別のメカニズムで発生する
特発性口臭や体臭が持続する場合、腸内細菌叢・SIBO・腸カンジダ・リーキーガットなどの関与が検討の対象となる場合がある
STEP 1〜4のアプローチ(口腔評価→腸内検査→腸管バリア→代謝サポート)は、原因を層別的に考える一つの標準となる

身体の臭いは、明確な一本道ではなく複合的な要因が絡み合っています。「臭いが気になる」こと自体、体が何かに気づいているサインかもしれません。現代の機能性医学的視点から、自分の体の反応を丁寧に読み解き、根本的なアプローチを展開することが大切です。

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(文責)東京原宿クリニック院長 篠原岳

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