分子栄養学

「血液検査は全部正常」なのに、なぜこんなに疲れるのか——OATで代謝の流れを整理する4ステップ

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篠原 岳

東京原宿クリニック院長 医学博士・総合内科専門医・呼吸器内科指導医・アレルギー専門医・臨床分子栄養医学研究会指導認定医・キネシオロジスト・宮澤医院栄養外来担当 さまざまな不調を、分子栄養学と現代医療とキネシオロジーを合わせて改善させようとしている。 詳しいプロフィールはこちら

こんにちは、東京原宿クリニック 院長 篠原岳です。

「健康診断では異常なしなのに、朝から体が重い」

「しっかり寝ても回復しない」

「頭がぼんやりして、仕事の集中が続かない」

そう話すと、「ストレスでしょう」「年齢のせいです」と言われてしまう。それでも、本人にとって疲れは現実です。

血液検査が正常だったことは、大きな異常が見つかっていないという大切な情報です。ただし、それだけで、エネルギーを作る過程や、栄養素が体内でどう使われているかまですべて分かるわけではありません。

そこで機能性医学では、選択肢のひとつとして尿中有機酸検査、OATを使うことがあります。

大切なのは、OATを「疲労の原因が一発で分かる検査」と考えないことです。OATは診断書ではなく、体内の代謝の流れを整理し、次に何を確かめるかを考えるための地図です。

尿中有機酸検査(OAT)とは何か

尿には、代謝の「あと」が現れます

食べたものからエネルギーを作り、神経伝達物質や抗酸化に関わる物質を作り、不要なものを処理する。体の中では、このような反応が絶えず行われています。

その過程で生じる代謝産物の一部は、尿の中に排泄されます。OATは、こうした代謝産物のパターンを見ることで、エネルギー代謝、栄養素の利用、酸化ストレス、腸内微生物由来の代謝物などを間接的に整理する検査です。

尿中有機酸の分析は、先天性の代謝異常を調べる領域で確立した役割を持っています。一方で、成人の慢性疲労を広く読み解く機能性医学的な使い方は、すべてが標準診療として確立しているわけではありません。だからこそ、結果は確定診断ではなく、次に確かめる仮説を作るために使います。

よく似たたとえで言えば、血液検査が「今、道路を走っている車や荷物の量」を見るのに対し、OATは「どの工程で渋滞し、どの道に負担が集まっているか」を推測するデータです。

血液検査とOATの役割の違い

血液検査とOATは、優劣ではなく役割が違います

血液検査は、貧血、甲状腺、炎症、肝臓や腎臓の機能、糖代謝などを評価するために欠かせません。疲れがある人に、いきなりOATだけを行うのではなく、まず一般的な診療で見落としてはいけない原因を確かめることが基本です。

その上で、血液検査では説明しきれない疲労やブレインフォグが続く場合に、OATを補助情報として重ねます。血液検査が土台であり、OATはその上に追加する視点です。

GI-MAPとOATは、同じ「腸の検査」ではありません

当院では、消化器症状や全身症状の背景を見るとき、GI-MAPとOATを使い分けることがあります。

GI-MAPは便を調べ、腸内の微生物、消化、炎症に関わる情報を整理します。一方のOATは尿を調べ、体の代謝過程や微生物由来の代謝物の手がかりを見ます。

例えるなら、GI-MAPが「腸内に誰がいるかを考える地図」、OATが「体内でどのような代謝の痕跡が出ているかを見る地図」です。両方は補い合いますが、片方の結果だけで原因を決めることはできません。

OATで整理する主な領域

エネルギー代謝

食事から得た栄養を、細胞が使えるエネルギーへ変える流れを見ます。ただし、OATはミトコンドリアの機能を直接測定する検査ではありません。特定の代謝産物の並びから、エネルギー代謝に負担がある可能性を考えます。

栄養素と補酵素の利用

ビタミンやミネラルは、代謝を進める補助役として働きます。OATでは、それらが十分に使われていない可能性を示すパターンが見られることがあります。

しかし、OATのマーカーだけで特定の栄養素が欠乏していると確定することはできません。食事内容、吸収不良の有無、血液検査、服薬などを重ねて判断します。

腸内微生物由来の代謝物

OATには、細菌や真菌の代謝と関連して研究されている項目があります。腹部膨満、ガス、便通の乱れ、食後の不調などがあるときは、腸内環境を考える手がかりになることがあります。

ただし、ひとつのマーカーが高いだけで、カンジダや特定の菌を原因と断定することはできません。症状、食事、抗菌薬の使用歴、GI-MAPなどと併せて読むことが重要です。

酸化ストレスと解毒に関わる流れ

活性酸素が増える側と、抗酸化のしくみで処理する側のバランスは、疲労や回復力を考える上で大切です。OATの一部は、その背景を考える補助情報になります。

ここでも、「デトックスができていない」とすぐに結論づけるのではなく、肝機能、食事の不足、慢性炎症、過度な運動、睡眠不足、薬剤などを広く見ます。

一つのマーカーだけで原因を決めない

OATについてよくある誤解

「血液検査が正常なら、代謝にも問題はない」

血液検査が正常であることは安心材料です。一方で、一般的な検査では、細胞がエネルギーを作る流れや、腸内微生物由来の代謝物まで直接評価するわけではありません。

「正常だから気のせい」でも、「OATにマーカーが出たからそれが真犯人」でもなく、両方の情報を組み合わせて考えることが大切です。

「ひとつのマーカーでカンジダや栄養不足が確定する」

OATはパターンで読む検査です。単一の項目に名前をつけて、それだけを治療対象にすると、本当の背景を見失うことがあります。

関連する複数の項目がどう並んでいるか。症状の時系列と合うか。食事や便通、睡眠、服薬で説明できるか。他の検査と矛盾しないか。そこまで確かめて、初めて次の行動が見えてきます。

「異常項目に対応するサプリを足せばよい」

マーカーとサプリを一対一で対応させると、サプリの種類だけが増えて、何が効いたのか分からなくなります。

それよりも、食事量が足りているか、たんぱく質を消化できているか、睡眠で回復できているか、便秘や下痢が続いていないかなど、代謝の土台から順番に整えます。

機能性医学的4ステップ

STEP 1:疲労の背景にある病気を見落とさない

疲労は、貧血や甲状腺の病気、感染症、炎症性疾患、心臓・肺・肝臓・腎臓の問題、睡眠時無呼吸、薬剤の影響、栄養不足、メンタルヘルスの不調などでも起こります。

急な体重減少、発熱、息切れ、胸の痛み、出血、筋力低下、日常生活が保てないほどの悪化などがある場合は、OATより先に標準的な医学評価が必要です。

STEP 2:単一項目ではなく全体の模様として読む

OATを読むときは、ひとつの高値や低値だけで結論を出しません。

エネルギー代謝、栄養利用、腸内微生物由来の代謝物、酸化ストレスに関する項目を横断して見ます。さらに、血液検査、GI-MAP、食事内容、便通、睡眠、運動、服薬、症状が出る時間帯と照らし合わせます。

この「重ねて読む」作業こそが、機能性医学の良いところです。

STEP 3:一度に全部を動かさず、土台から順番に整える

複数の手がかりが見つかっても、すべてを同時に治そうとする必要はありません。

まずは、食事の量とバランス、睡眠リズム、水分、便通、活動量と回復のバランスなどを見直します。栄養不足や吸収不良が疑われる場合は、それを確かめてから必要な支援を選びます。

サプリメントも同じです。必要性、服薬との相互作用、腎機能や肝機能、妊娠の可能性などを確認し、必要なものだけを個別に検討します。

STEP 4:検査値だけでなく、生活の変化で再評価する

再評価で大切なのは、OATの項目が動いたかだけではありません。

朝起きられるようになったか。仕事中の集中が続くか。食後のだるさが減ったか。眠りと便通はどうか。家事や外出の後に回復できるか。

こうした症状と生活機能の変化を見ながら、今の方針を続けるのか、見直すのかを決めます。OATの再検は全員に同じ時期に行うのではなく、経過と目的に応じて検討します。

OATを活用する4ステップ

まとめ

血液検査が正常でも、疲れやブレインフォグが続くことはあります。それは、症状が気のせいだという意味ではありません。

尿中有機酸検査は、エネルギー代謝、栄養素の利用、腸内微生物由来の代謝物、酸化ストレスに関する流れを整理する補助情報になります。

ただし、OATだけで病気や欠乏、カンジダなどを確定することはできません。血液検査、症状、食事、睡眠、便通、服薬、必要に応じてGI-MAPなどを重ねて、何を先に整えるかを考えることが大切です。

検査の目的は、異常値を数えることではありません。疲れの背景をひとつずつ整理し、無理のない順番で改善の糸口を探すこと。そのために使ってこそ、OATは意味のある検査になります。

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※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を代替するものではありません。疲労が強い、急に悪化した、日常生活に支障がある場合は、医療機関にご相談ください。

(文責)東京原宿クリニック院長 篠原岳

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