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こんにちは、東京原宿クリニック 院長 篠原岳です。
毎朝シャワーを浴びて、デオドラントも丁寧に使っている。歯磨きも念入りにしている。それなのに、体臭や口臭が気になる——そんな経験はありませんか?
一生懸命ケアしているのに改善しないと、「自分の清潔さが足りないのだろうか」と自分を責めてしまう方も少なくありません。
先にお伝えしたいのは、においには発生する場所がいくつもあるということです。口臭の多くは口の中から生まれますが、一部は体の内側(血液にのって肺や汗から出るタイプ)に由来します。そして近年は、腸内環境とにおいの関係を示唆する研究も出てきています。
2026年に報告された研究では、健常児の腸内細菌叢と呼気中のVOC(揮発性有機化合物)の構成に関連が認められ、無菌・ノトバイオートマウスの実験では、腸内細菌が呼気VOCの一部に直接寄与し得ることが示されました。ただしこれは、においの強さや体臭、口臭の治療効果を評価した研究ではありません。あくまで「腸内細菌と呼気成分に関連がある」ことを示した段階です。
だからこそ大切なのは、どこから来るにおいなのかを順番に切り分けること。この記事では、口腔・皮膚・全身・腸を、決めつけずに順番に見ていく考え方を4ステップで整理します。
におい物質は「どこから」来るのか
口臭の多くは「口の中」から
口臭の代表的なにおい物質は、揮発性硫黄化合物(VSC)と呼ばれる硫化水素やメチルメルカプタンです。「卵が腐ったようなにおい」「生ゴミのようなにおい」と表現されることがあります。
ただし、これらの主な発生源は多くの場合、舌の表面(舌苔)や歯周ポケットにいる口腔内の細菌です。メチルメルカプタンが検出されたからといって、それを「腸から来た証拠」とすることはできません。まずは口腔内を丁寧に評価することが出発点になります。
一部は「体の内側」から——血行性口臭・体臭
一方で、口の中を整えても残るタイプの口臭もあります。これは口腔外・血行性口臭と呼ばれ、血液にのった物質が肺から呼気として出てくるものです。この場合に主要なにおい物質として報告されているのは、ジメチルスルフィド(DMS)です。
また、「魚のようなにおい」で知られるのはトリメチルアミン(TMA)という物質で、トリメチルアミン尿症(TMAU)では、TMAが汗・呼気・尿などから排出され、独特の魚臭を呈します(アンモニアではありません)。
体臭についても、多くは皮膚の常在菌と汗の相互作用によって生まれます。つまり「におい」は一つの原因物質・一つの場所に決まっているわけではなく、口腔・皮膚・全身代謝・消化管など複数の由来が考えられるのです。
腸内環境とにおいの関係
腸内細菌は、食事由来の成分やタンパク質を代謝する過程で、硫化水素などの揮発性物質を産生し得ます。SIBO(小腸内細菌増殖症)や腸内環境の乱れがあると、こうしたガスの産生が増える可能性が指摘されています。
前述の2026年の研究のように、腸内細菌叢と呼気成分の関連は少しずつ明らかになりつつあります。ただし現時点では、「腸内細菌がにおいの強さを決める」と断定できる段階ではありません。口腔や皮膚の原因を適切に治療しても改善しない一部のケースで、全身疾患・代謝物・薬剤・食事・消化管の状態なども合わせて検討する——という位置づけが現実的です。

よくある誤解
誤解①:「口腔ケアやデオドラントは”ごまかし”にすぎない」
これは正確ではありません。口臭の多くが口の中に由来する以上、舌苔のケア・歯周治療・唾液や口腔乾燥への対処は、においの発生源そのものへの治療であって、単なるマスキングではありません。
治療用のマウスウォッシュには、口臭・歯垢・歯肉炎を抑える効果が期待できるものがあります。米国歯科医師会(ADA)も、抗菌成分を含む洗口液が口臭の管理に役立つ場合があるとしています(ただし着色や味覚の変化などの理由から、適応や使用期間は歯科医の評価のもとで判断するのが前提です)。体臭でも、皮膚常在菌と汗の相互作用が主な機序であれば、皮膚や発汗を対象としたケアは原因の仕組みに直接働きかけます。「腸を治さない限り意味がない」と決めつける必要はありません。
誤解②:「においは食べたものがそのまま出てくるだけ」
これは半分正しく、半分は不完全です。ニンニクなど食事の影響は確かにあります。ただ、同じ食事でもにおいに個人差が出るのは、食べた成分を体や腸内細菌がどう代謝するかの違いも関わっていると考えられています。食事だけ、あるいは腸だけ、と一因に絞りすぎないことが大切です。
誤解③:「強いマウスウォッシュは長期的に口臭を悪化させる」
これも一般化はできません。クロルヘキシジンなど一部の成分では、歯の着色や味覚の変化が問題になることはあります。しかし「強い洗口液が長期的に口臭を悪化させる」と言い切れる十分な根拠はありません。むしろ、抗菌成分を含む治療用洗口液が口臭管理に役立つ場合があることが示されています。大切なのは、自己判断で強い製品を使い続けるのではなく、歯科・医科で状態に合った使い方を相談することです。

順番に切り分ける4ステップ
においの悩みは、「どこから来るのか」を順番に切り分けていくのが近道です。機能性医学の視点でも、いきなり腸を疑うのではなく、次の順番で見ていきます。
STEP1:まず口腔と皮膚を、きちんと評価・ケアする
最初の出発点は、口腔と皮膚です。
– 口腔:歯科での歯周ポケットの評価・歯石除去・舌苔のケア、ドライマウス(口腔乾燥)への対処。口臭の多くはここで大きく変わります。
– 皮膚・発汗:洗いすぎによる常在菌バランスの乱れを避けつつ、汗と皮膚常在菌への基本的なケアを整える。
ここを飛ばして腸のサプリから始めても、遠回りになりがちです。
STEP2:それでも残るなら、全身・代謝・薬剤・食事を見直す
口腔・皮膚を適切にケアしても残るにおいは、体の内側の要因を検討します。
– 全身要因:肝臓・腎臓・呼吸器・副鼻腔などの状態。糖尿病や特定の代謝の問題がにおいに関わることもあります。
– 代謝物:魚のようなにおいなら、トリメチルアミン(TMA)とその代謝に関わるトリメチルアミン尿症(TMAU)の可能性。食事(コリン・カルニチンの多い食品)の調整が検討されることがあります。
– 薬剤・食事:服用中の薬や、特定の食品(ニンニク・アルコールなど)の影響を洗い出します。
ここは自己判断でなく、医療機関で順番に確認していく領域です。
STEP3:必要に応じて、腸内環境・消化を検査する
上流を確認したうえで、腸の関与が疑われる場合には検査を検討します。
– 便のPCR検査(GI-MAP/Diagnostic Solutions Laboratory):腸内細菌の構成、消化酵素の働き(膵エラスターゼ-1)、腸バリアの指標などを評価します。
– SIBO呼気検査(水素・メタン):小腸での細菌増殖の有無を確認します。
検査で腸内環境の乱れやSIBOが確認された場合には、状態に合わせて、ベルベリンやオレガノオイルなどの植物性抗菌成分、食事の間隔をあけてMMC(消化管のクリーニング波)を促す工夫、消化を助けるアプローチなどを検討します。いずれも医師の判断のもとで進めるものです。
STEP4:解毒と腸バリア、生活の土台を整える
体の内側でにおい物質が発生・吸収されている場合、それを処理する肝臓の解毒と、物質が血流へ漏れにくい腸のバリアが土台になります。
– 解毒のサポート:グルタチオンやその材料となるNAC(N-アセチルシステイン)、硫黄代謝に関わる補因子モリブデンなど。
– 腸バリアのケア:L-グルタミン、亜鉛(亜鉛カルノシンなど)、ケルセチン、ビタミンD・ビタミンAなど、粘膜の修復を支える栄養。
– 生活の土台:睡眠、ストレス、よく噛んで食べること。消化がうまくいくと、未消化タンパク質の腐敗によるガス産生を抑えられる可能性があります。
これらは「腸が原因と分かってから」ではなく、上流の口腔・皮膚・全身を確認したうえで、必要に応じて重ねていくものです。

まとめ
体臭・口臭で長く悩んでいる方に、まずお伝えしたいのは「清潔さや意志の問題ではない」ということです。においには複数の由来があり、順番に切り分けることで対処の道筋が見えてきます。
– まず口腔・皮膚:口臭の多くは口の中から。舌苔・歯周・唾液のケアは立派な”発生源への治療”です
– 残れば全身・代謝・薬剤・食事:魚のようなにおいはアンモニアではなくトリメチルアミン(TMA)。全身の状態も含めて確認します
– 必要に応じて腸を検査:GI-MAP(Diagnostic Solutions Laboratory)やSIBO呼気検査で腸の関与を評価
– 土台を整える:解毒(グルタチオン・NAC・モリブデン)と腸バリア(L-グルタミン・亜鉛・ケルセチン)、そして睡眠・咀嚼などの生活習慣
「腸を治さないと意味がない」でも「口だけ磨けばいい」でもなく、あなたのにおいがどこから来ているのかを、順番に見ていく。それが遠回りを減らす近道です。気になる症状が続くときは、歯科・医科でご相談ください。
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※本プログラムは医療行為、診断、治療、または症状の改善を目的としたものではありません。
免責事項
この情報は医療・健康に関する情報提供を目的としたものです。特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。体調に関するご判断は必ず医療機関にご相談ください。
(文責)東京原宿クリニック院長 篠原岳











