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こんにちは、東京原宿クリニック 院長 篠原岳です。
「昼食を食べたあと、午後になると別人のように眠くなる」「会議中に頭が真っ白になり、コーヒーや甘いものがないと働けない」「ちゃんと食べているのに、夕方には電池が切れたようにぐったりする」——こうした経験はないでしょうか。
睡眠は足りているはず。怠けているわけでもない。それなのに、午後の決まった時間に集中力が底をつく。そして気づくと、また甘いものに手が伸びている。
この「午後の失速」を、多くの方は「年齢のせい」「気合いが足りない」と片づけてしまいます。けれど、その背景には食後の血糖値の乱高下(血糖スパイクと、その反動の急降下)という、見落とされやすいメカニズムが隠れていることがあります。
今日は、「ちゃんと食べているのに午後つらい」という症状を入り口に、血糖の乱高下が眠気・ブレインフォグ・甘いもの欲求をどう生むのか、そして機能性医学的にどう整えるのかを、4つのステップでお伝えします。
「午後の失速」と血糖スパイクとは何か
血糖は「上がり方」より「下がり方」が問題
食事をすると血糖値は上がります。健康な人では、ゆるやかに上がってゆるやかに下がります。
ところが、白米・パン・甘いものなど精製された糖質を、空腹のところへ一気に入れると、血糖値が急上昇します。これが「血糖スパイク」です。
体は上がりすぎた血糖を下げようと、インスリンを慌てて大量に分泌します。すると今度は、上がった分を通り越して血糖が下がりすぎる——反応性の急降下(反応性低血糖)が起こります。
ジェットコースターのように、急上昇のあとに急降下する。この「下がり方」の急さこそが、午後の不調の引き金になりやすいのです。機能性医学では、空腹時血糖の数値そのものよりも、この食後の「血糖変動幅」を重視します。
なぜ「眠気・頭が働かない・また甘いもの」になるのか
血糖が急降下したとき、脳はエネルギー不足の危機を感じます。ここで2つのことが同時に起きます。
ひとつは、強烈な眠気とブレインフォグ。脳の主なエネルギー源はブドウ糖なので、血糖が急に下がると、思考力・集中力・気力がストンと落ちます。「午後2〜3時にいつも眠い」「頭に霧がかかる」のは、この時間帯に血糖が底をつきやすいからです。
もうひとつは、アドレナリンの放出。血糖の急降下を「危機」と判断した体は、血糖を引き上げるためにアドレナリンやコルチゾールを放出します。これが動悸・イライラ・そわそわ感を生むことがあります。
そして脳は、手っ取り早く血糖を上げるために「甘いものを食べろ」という強いサインを出します。これに従うとまた血糖スパイク——という、乱高下のループが完成します。「甘いものがやめられない」のは、意志の弱さではなく、このループの中にいるからかもしれません。
「腸→血糖→副腎」の悪循環
血糖の乱高下は、単独で起きているとは限りません。背景に腸内環境や副腎(HPA軸)の問題が重なっていることがあります。
腸内環境の乱れ(SIBO・リーキーガット)→ 慢性炎症 → インスリンが効きにくくなる(インスリン抵抗性)→ 血糖スパイクが悪化 → 急降下でアドレナリン・コルチゾール放出 → 副腎・HPA軸が疲弊 → 血糖コントロールがさらに乱れる——という、ドミノ倒しが起きている可能性があります。
近年の腸脳軸(gut-brain axis)に関する複数の総説でも、腸内細菌叢がHPA軸のコルチゾール応答を調節し、不安や気分の落ち込みと関連している可能性が示唆されています。午後の不調は、血糖だけでなく「腸と副腎」も巻き込んだ全身の問題のことがあるのです。

よくある3つの誤解
誤解①「健康診断の血糖値が正常なら問題ない」——とは限りません
「健康診断で血糖値は正常でした」とおっしゃる方は多いです。けれど、一般的な健診で測るのは空腹時血糖です。
血糖スパイクとその反動の急降下は食後1〜4時間に起きるため、空腹時の採血では捉えられません。空腹時血糖もHbA1cも正常なのに、食後だけ激しく乱高下している——という方は少なくないのです。
機能性医学では、持続血糖モニタリング(CGM)を2〜4週間つけて、食事・睡眠・ストレスと血糖変動の関係を「見える化」することがあります。「正常範囲内」と「最適」は、同じではありません。
誤解②「甘いものを我慢すれば安定する」——それだけでは不十分なことがあります
砂糖を控えることは大切な一歩です。ですが、それ「だけ」で終わると、うまくいかないことがあります。
腸内環境の乱れ(SIBO・リーキーガット)があると、食後のインスリン応答が過剰になりやすいとされています。また、慢性的なストレスや睡眠不足でコルチゾールが高い状態では、コルチゾール自体が血糖を揺らします。
つまり、根本(腸・副腎・食べ方の順番)を整えずに「我慢」だけを続けても、反動が来たり、土台が変わらないまま再発したりしがちです。我慢比べではなく、乱高下が起きにくい「仕組み」をつくる視点が要になります。
誤解③「血糖を上げないために朝食を抜く」——逆効果になることがあります
「血糖を上げたくないから」と朝食を抜く方がいます。しかし、長い空腹のあとの最初の食事は、かえって血糖スパイクを起こしやすくなることがあります(セカンドミール現象の逆を踏んでしまう)。
また、欠食で血糖が下がりすぎると、体はアドレナリン・コルチゾールで血糖を引き上げようとし、かえって不安や集中力低下を招くことがあります。「抜く」より「上がり方・下がり方をなだらかにする食べ方」のほうが、午後の失速対策としては理にかなっています。

科学的根拠に基づくSTEP 1-4
STEP 1:血糖変動を「見える化」する——検査と自己評価
まず行うべきは、自分の血糖がどう動いているかを知ることです。闇雲に食事制限を始める前に、現在地を把握します。
機能性医学でよく使う指標は次のとおりです。
– 空腹時インスリン
– HOMA-IR(インスリン抵抗性指数)
– HbA1c(3ヶ月平均)
– 唾液コルチゾール6点採取(HPA軸の日内リズム。朝高・夜低の曲線が正常)
そしてCGM(持続血糖モニタリング)です。2〜4週間つけると、「どの食事で」「どの時間に」血糖が急降下しているかが一目でわかります。反応性低血糖の方では、食後2〜3時間で60〜70mg/dL以下に落ちるパターンが見られることがあります。
なお、これらのうちCGMや唾液コルチゾール検査は、保険外の検査や自費の位置づけになることがあります。まずは医療機関で、糖尿病やほかの病気がないかを確認することが前提です。
STEP 2:血糖スパイクを「なだらかに」する食べ方
午後の失速対策の中心は、薬やサプリではなく食べ方です。柱は3つあります。
① 食べる順番(ベジ・プロテインファースト)
食物繊維(野菜・きのこ・海藻)→ タンパク質・脂質 → 炭水化物の順で食べると、食後血糖の上昇がなだらかになると報告されています。同じ食事でも、順番を変えるだけでスパイクが小さくなります。食前に大さじ1杯の酢や、食事にオリーブオイルを加えると、胃排出がゆるやかになり山がさらに削れることも示唆されています。「何を抜くか」より「何を先に食べるか」から始めるのが、続けやすいコツです。
② 高GIから低GIへ「段階的に」切り替える(Week単位)
白米・白パン・砂糖などの高GI食品を、いきなりゼロにするのではなく段階的に置き換えます。
– Week1:白米に大麦(βグルカン)を2割混ぜる
– Week2:1食を玄米・雑穀米に
– Week3〜4:昼食後に10分歩く(食後ウォーキングは血糖の山を削ります)
③ 少量をこまめに・タンパク質を毎食20〜30g
血糖が急降下しやすい方は、1日3食を1日5〜6回の少量多食に分けると変動がゆるやかになることがあります。間食は血糖を上げにくい組み合わせ——ナッツ(アーモンド・クルミ)+タンパク質(ゆで卵・チーズ)などが向きます。各食でタンパク質を20〜30g確保すると、胃排出がゆるやかになり、スパイクと急降下の両方を抑えやすくなります。
STEP 3:腸・副腎・栄養の「土台」を整える
食べ方を変えても改善が頭打ちのとき、背景に腸内環境やHPA軸、栄養の問題が隠れていることがあります。
腸を評価・修復する
GI-MAP(便のDNA検査)で腸内細菌叢やリーキーガットの指標(ゾヌリン)を評価し、SIBOが疑われれば呼気検査も検討します。腸粘膜のケアにはL-グルタミン・亜鉛カルノシン・ビタミンDなどが用いられます。
血糖の安定を助ける栄養素
– マグネシウムグリシネート:インスリンの働きを支え、夜間の血糖急落や副腎の過活動をやわらげる可能性
– クロム:インスリン感受性を高める可能性
– ベルベリン:インスリン感受性を改善する可能性が一部の研究で示唆(血糖降下作用があるため、薬を服用中の方は必ず医師に相談)
– L-テアニン:血糖急降下後のアドレナリン応答を穏やかにする可能性
HPA軸(副腎)を支える
唾液コルチゾールで日内リズムの乱れが確認された場合、アシュワガンダ・ロディオラなどのアダプトゲンが、過活動を緩和する目的で検討されることがあります(段階に応じて選びます)。
STEP 4:経過を見ながら「夜間低血糖」にも備える
プロトコル開始から2〜3ヶ月後に再評価します。目標は、HOMA-IR・空腹時インスリン・HbA1c、そして唾液コルチゾールの日内リズムの正常化です。
見落とされやすいのが夜間低血糖です。「夜中に決まって目が覚める」「朝から不安感がある」「起きた瞬間からぐったり」という方は、睡眠中に血糖が下がり、アドレナリンで起こされている可能性があります。
対策として、就寝前に少量のタンパク質+複合炭水化物(無糖ヨーグルト+ナッツひとつかみ等)を摂ると、夜間の血糖急落を防げる場合があります。朝の目覚めと午後の集中力は、実は「前の晩の血糖」とつながっているのです。
これらは一度に全部やる必要はありません。まずは「食べる順番」と「食後10分の散歩」——今日からできる一手から始めてみてください。

まとめ
「午後になると別人のように眠い・頭が働かない・また甘いものに手が伸びる」——それは、あなたの気合いや年齢のせいとは限りません。
食後の血糖スパイクと、その反動の急降下というシグナルに、体が正直に反応しているだけかもしれません。
今日のポイントを整理します。
– 健診の空腹時血糖が正常でも、食後1〜4時間に血糖が乱高下していることがある(CGMで可視化)
– 急降下で眠気・ブレインフォグ・アドレナリン(動悸・不安)・甘いもの欲求のループが生まれる
– 背景に腸(SIBO・リーキーガット)→インスリン抵抗性→副腎・HPA軸疲弊の悪循環が隠れていることがある
– 整え方は「我慢」ではなく仕組み:①測る(CGM・インスリン)②食べ方(順番・低GI・少量多食・食後散歩)③腸・副腎・栄養の土台 ④夜間低血糖まで見る
甘いものに手が伸びるのを「自分の弱さ」と責めてきた方へ。それは意志ではなく、血糖の乱高下が出しているサインかもしれません——そう考えるだけで、少し肩の力が抜けるのではないでしょうか。
個人差はありますが、正しい順番で取り組めば、体は必ず応えてくれます。ひとりで抱え込まず、気になる状態が続くときは医療機関にご相談ください。
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※本プログラムは医療行為、診断、治療、または症状の改善を目的としたものではありません。
(文責)東京原宿クリニック院長 篠原岳












