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こんにちは、東京原宿クリニック 院長 篠原岳です。
「もう、がんばれない」
「休んだはずなのに、朝から体が重い」
「仕事のことを考えるだけで、体から力が抜ける」
診察室で、こうした言葉を聞くことがあります。
多くの方は、そこで自分を責めています。
「気合いが足りないのでは」
「自分だけ弱いのでは」
「もっと頑張れば戻れるのでは」
でも、燃え尽きは単なる根性不足ではありません。
睡眠リズム、ストレス反応、血糖、栄養、炎症、職場環境などが積み重なり、体が「これ以上は危ない」とブレーキをかけている状態として考える必要があります。
この記事では、燃え尽きを「メラトニンだけ」「副腎だけ」「心だけ」で説明するのではなく、睡眠リズムとHPA軸、そして体全体の総負荷として整理していきます。
燃え尽きとは何か
燃え尽きは、WHOのICD-11では、慢性的な職場ストレスが十分に管理されなかった結果として生じる「職業現象」と位置づけられています。
医学的な病名そのものではありませんが、次の3つの要素で説明されます。
– エネルギーが枯渇したような疲弊感
– 仕事への心理的な距離、冷めた感じ、否定的な気持ち
– 以前のように働けない、役に立てていないという感覚
ここで大切なのは、燃え尽きとうつ病、不安症、睡眠障害、甲状腺疾患、貧血、睡眠時無呼吸などは症状が重なるということです。
「これは燃え尽きだから休めばいい」と自己判断するのも、「全部メンタルだから仕方ない」と片づけるのも、どちらも危険です。
気分の落ち込みが強い、希死念慮がある、食事や睡眠が大きく崩れている、動悸・胸痛・体重減少などがある場合は、まず医療機関での評価が必要です。

メラトニンとコルチゾールはどう関わるのか
燃え尽きで見落とされやすいのが、睡眠と概日リズムです。
私たちの体には、朝に活動モードへ切り替える仕組みと、夜に回復モードへ切り替える仕組みがあります。
朝の覚醒やストレス対応に関わる代表がコルチゾールです。通常は朝に高く、夜に向かって下がっていきます。
一方、夜の眠りや体内時計に関わる代表がメラトニンです。夜に暗くなることで分泌が高まり、「眠る時間ですよ」と体に知らせます。
このリズムが乱れると、夜になっても脳が仕事モードのままになり、眠りが浅くなり、翌朝も回復感が出にくくなります。
2025年にClinics and Practice誌に掲載されたシステマティックレビューでは、医療従事者を対象とした研究を整理し、燃え尽き症状の強さが、メラトニン分泌低下、コルチゾール調節異常、概日リズムの乱れ、睡眠の質低下と関連する可能性が報告されています。
ただし、ここで大切なのは「メラトニンが少ないから燃え尽きる」と単純に決めつけないことです。
メラトニンやコルチゾールは、燃え尽きの一部を説明する重要な手がかりですが、原因は一つではありません。

よくある3つの誤解
誤解1:長く休めば必ず回復する
休むことは大切です。
ただ、睡眠リズムが乱れ、夜も緊張が抜けず、朝に光を浴びる習慣も崩れている場合、休暇だけでは回復しきれないことがあります。
「旅行に行ったのに疲れが取れなかった」という方は、休み方が足りないのではなく、体が回復モードに入りにくくなっているのかもしれません。
誤解2:抗うつ薬は使わない方がいい
これは危険な誤解です。
燃え尽きとうつ病は症状が重なるため、自己判断で区別することはできません。うつ病や不安症が背景にある場合、抗うつ薬が必要になることもあります。
一方で、薬剤によっては不眠、眠気、夢の変化など睡眠に影響が出ることがあります。大切なのは「薬を悪者にすること」ではなく、服用時間や薬剤選択を主治医と調整することです。
自己判断で中止するのは避けてください。
誤解3:メラトニンをたくさん飲めばよい
メラトニンは「多く飲めば深く眠れる」というものではありません。
高用量やタイミングのずれた使用では、翌日の眠気、頭痛、悪夢、不眠、体内時計のずれが起こることがあります。
また、服薬中、妊娠中、授乳中、自己免疫疾患、てんかんなどがある方では注意が必要です。
使う場合も、自己判断で増やすのではなく、目的とタイミングを医療者と確認しながら行うのが安全です。

整えるための4ステップ
STEP 1:まず「本当に燃え尽きだけか」を確認する
最初にするべきことは、燃え尽きという言葉にすべてを押し込めないことです。
強い疲労、朝起きられない、頭が働かない、涙が出る、イライラする、眠れない。
これらは燃え尽きでも起こりますが、うつ病、不安症、甲状腺機能異常、鉄欠乏、ビタミンB12不足、睡眠時無呼吸、慢性感染、薬剤の影響でも起こります。
必要に応じて、血算、フェリチン、甲状腺、血糖、肝腎機能、ビタミンD、B12、睡眠の評価などを確認します。
機能性医学では、ここに唾液コルチゾールの日内リズムなどを補助的に見ることもあります。ただし、それだけで「副腎疲労」と診断するものではありません。
検査は、症状の背景を整理するための道具として使います。
STEP 2:睡眠リズムを「夜」だけでなく「朝」から整える
燃え尽きの方は、夜に眠れないことだけに注目しがちです。
でも、体内時計は朝から始まります。
起床後に光を浴びること、朝食で体にエネルギーが入ったことを知らせること、日中に少し体を動かすこと。これらが夜のメラトニンリズムを支える土台になります。
今日からできることは、次のような小さな調整です。
– 起きたらカーテンを開ける
– 朝に屋外光を浴びる
– 午後以降のカフェインを減らす
– 就寝前の仕事メールやSNSをやめる
– 寝る直前まで明るい画面を見ない
– 休日も起床時刻を大きくずらしすぎない
「眠る努力」だけでなく、「夜に眠れる体内時計を朝から作る」ことが大切です。
STEP 3:HPA軸を追い込む生活パターンを減らす
HPA軸とは、脳と副腎をつなぐストレス反応のシステムです。
ストレスがあると、体はコルチゾールなどを使って危機に対応します。これは本来、悪いものではありません。
問題は、仕事、睡眠不足、血糖変動、カフェイン、対人ストレス、炎症、痛みなどが重なり、ずっと警報が鳴り続けることです。
この状態が続くと、夜になっても体が休息モードに切り替わりにくくなります。
対策は、いきなり人生を全部変えることではありません。
まずは「警報を鳴らし続けている要因」を一つずつ減らします。
– 空腹のままカフェインを入れない
– 夜遅い仕事連絡を減らす
– 血糖が落ちやすい人は補食を工夫する
– 寝る前に翌日の不安を紙に書き出す
– 呼吸、ストレッチ、入浴で交感神経を落とす
– 休日に予定を詰め込みすぎない
アシュワガンダ、ロディオラ、マグネシウムなどが話題になることもありますが、これらは全員に必要なものではありません。妊娠、授乳、肝疾患、甲状腺疾患、薬の内服がある方では注意が必要です。
サプリは「土台を整えたうえでの補助」と考えます。
STEP 4:腸・血糖・栄養・炎症の総負荷を下げる
燃え尽きは、仕事のストレスだけで起こるとは限りません。
体の中に別の負荷があると、同じ仕事量でも回復しにくくなります。
たとえば、血糖の乱高下があると、体は血糖を維持するためにストレスホルモンを動員しやすくなります。
腸内環境が乱れ、便秘や下痢、腹部膨満が続いていると、睡眠や炎症、栄養吸収にも影響することがあります。
鉄、B12、マグネシウム、タンパク質、ビタミンDなどの不足があると、エネルギー産生や神経の安定にも影響します。
ここで大切なのは、何か一つを犯人にしないことです。
機能性医学の良いところは、燃え尽きを「心の弱さ」ではなく、体の負荷の総量として見直せる点にあります。
仕事量、睡眠、光、血糖、栄養、腸、炎症、家庭環境、人間関係。
これらを一つずつ整理すると、「どこから回復を始めるか」が見えてきます。
まとめ
「もう、がんばれない」と感じるとき、それはあなたの意志が弱いからではありません。
体が長いあいだ緊張し続け、睡眠リズムが乱れ、回復のスイッチが入りにくくなっているのかもしれません。
燃え尽きでは、メラトニン、コルチゾール、HPA軸のリズムが関わる可能性があります。
ただし、それだけで説明しきれるものではありません。
大切なのは、次の順番です。
1. うつ病、睡眠障害、甲状腺、貧血などを見落とさない
2. 朝の光と夜の暗さで体内時計を整える
3. HPA軸を追い込む生活パターンを減らす
4. 腸・血糖・栄養・炎症の総負荷を下げる
頑張れない自分を責める前に、体が何に耐え続けてきたのかを一緒に見ていきましょう。
回復は、気合いで押し切るものではありません。
体がもう一度、安心して休める状態を作るところから始まります。
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免責事項
この情報は医療・健康に関する情報提供を目的としたものです。
特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。
体調に関するご判断は、必ず医療機関にご相談ください。
参考にした主な情報
– WHO: Burn-out an occupational phenomenon: International Classification of Diseases
– Ungurianu A, Marina V. Melatonin and Cortisol Suppression and Circadian Rhythm Disruption in Burnout Among Healthcare Professionals. Clinics and Practice. 2025.
– NHS inform: Selective serotonin reuptake inhibitors (SSRIs)
– Melatonin: Pharmacology, Functions and Therapeutic Benefits. Applied Sciences. 2023.
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※本プログラムは医療行為、診断、治療、または症状の改善を目的としたものではありません。
(文責)東京原宿クリニック院長 篠原岳










