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こんにちは、東京原宿クリニック 院長 篠原岳です。
婦人科で検査を受けた。
ホルモン値も、子宮や卵巣も、「大きな異常はありません」と言われた。
それなのに、生理前になると毎月つらい。
頭痛が出る。
急に怒りっぽくなる。
顔や脚がむくむ。
眠いのに眠れない。
甘いものが止まらない。
体も心も、自分のものではないように感じる。
こういう方は少なくありません。
「異常なし」と言われると、安心する一方で、こう思ってしまうことがあります。
では、このつらさは何なのか。
自分の性格の問題なのか。
気にしすぎなのか。
でも、PMSやPMDDは、ホルモンの数値が単純に多い・少ないだけで起こるものではありません。
今の医学では、月経周期にともなうホルモンの変化に対して、脳や神経がどれくらい敏感に反応するかが大事だと考えられています。
つまり、検査で「異常なし」でも、生理前に強い不調が出ることはあります。
ここに機能性医学の視点を重ねると、もう少し広く見ることができます。
睡眠、血糖、ストレス、鉄や甲状腺、片頭痛、腸内環境、エストロゲン代謝。
こうしたものが重なると、生理前の不調が強くなることがあります。
その中のひとつの補助的な視点が、COMT遺伝子です。
ただし、最初に大事なことを言います。
COMTがPMSの原因だ、という話ではありません。
COMTは、あくまでエストロゲン代謝やストレス反応を考えるときの補助情報です。
この記事では、難しい遺伝子の話をできるだけ噛み砕きながら、「異常なし」と言われたPMSをどう整理していくかを4ステップでお伝えします。
PMSは「ホルモン量」だけでは説明できない
PMSは、月経前に心や体の症状が強くなり、月経が始まると軽くなる状態です。
たとえば、次のような症状があります。
– イライラする
– 怒りっぽくなる
– 落ち込みや不安が強くなる
– 頭痛が出る
– むくむ
– 胸が張る
– 眠気やだるさが強くなる
– 甘いものがほしくなる
PMDDは、その中でも気分症状が強く、仕事、人間関係、家庭生活に大きく影響する状態です。
ここで誤解されやすいのは、「ホルモン値が正常ならPMSではない」という考え方です。
実際には、PMSやPMDDでは、血液検査のホルモン値だけで症状を説明できないことがあります。
問題は、ホルモンの量だけではありません。
ホルモンの変化に、脳と体がどれくらい反応してしまうか。
ここがとても大切です。
同じ気温でも、暑がりの人と寒がりの人がいるように、同じホルモン変動でも、強く反応する人と、あまり反応しない人がいます。
生理前だけ別人のようになる方は、意思が弱いわけでも、性格が悪いわけでもありません。
体の中で、月経前にいくつもの負荷が重なっている可能性があります。

生理前に起こりやすい「重なり」
生理前の不調は、ひとつの原因だけで起きるというより、いくつかの要素が重なって起きることが多いです。
たとえば、こんな流れです。
ホルモンの変化
→ 脳が敏感に反応する
→ 睡眠が浅くなる
→ 血糖が乱れやすくなる
→ 頭痛やイライラが強くなる
→ むくみやだるさが出る
ここに、鉄不足、甲状腺の問題、片頭痛、ストレス、カフェイン、アルコール、便秘、腸内環境の乱れが加わると、症状はさらに強くなります。
だから、PMSを考えるときは、
「エストロゲンが多いから」
「プロゲステロンが少ないから」
「COMTが遅いから」
と、ひとつに決めつけないことが大切です。
毎月のつらさをほどくには、絡まった糸を一本ずつゆるめるように、順番に見ていく必要があります。

COMTは何をしているのか
COMTは、体の中にある酵素の名前です。
正式には Catechol-O-Methyltransferase といいます。
難しい名前ですが、イメージとしては「処理係」です。
COMTは、ドパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンのようなストレスや気分に関わる物質の処理に関わります。
さらに、エストロゲンが体の中で代謝される途中にできる一部の物質の処理にも関わります。
そのため、機能性医学では、COMTを次のようなことを考える補助情報として見ることがあります。
– ストレスに反応しやすいか
– 緊張や焦りが出やすいか
– ドパミン代謝に個人差がありそうか
– エストロゲン代謝の流れに偏りがありそうか
ただし、ここで大事なのは、COMTは「診断名」ではないということです。
COMTがゆっくり働くタイプだからといって、必ずPMSになるわけではありません。
反対に、COMTに特徴がなくても、PMSやPMDDが強い人はいます。
遺伝子は、体質のヒントにはなります。
でも、遺伝子だけで今の症状の原因が決まるわけではありません。

よくある誤解
誤解1:COMTがPMSの根本原因である
これは言いすぎです。
COMTは、エストロゲン代謝やストレス反応を考えるときの補助視点にはなります。
でも、PMSの原因をCOMTだけで説明することはできません。
実際には、PMSにはいろいろな要素が関わります。
– 脳のホルモン感受性
– セロトニンやGABAなどの神経伝達
– 片頭痛
– 鉄不足
– 甲状腺
– 睡眠不足
– 血糖変動
– うつや不安
– 子宮内膜症や月経困難症
COMTはその中のひとつの手がかりです。
犯人探しではなく、地図の一部として使う。
それくらいの距離感が安全です。
誤解2:エストロゲン代謝だけで怒りやむくみが起こる
エストロゲンは、体の中でいくつかのルートを通って処理されます。
その中には、酸化ストレスと関わる経路もあります。
この話は、生化学としては大事です。
ただし、そこからすぐに、
エストロゲン代謝が悪い
→ 炎症が起きる
→ むくむ
→ 怒りが出る
→ PMSが悪化する
と一直線に決めるのは強すぎます。
生理前の怒りやむくみは、脳の感受性、睡眠、血糖、片頭痛、体液調節、塩分、ストレス、栄養状態なども重なって起こります。
エストロゲン代謝は大事な視点ですが、それだけで全部を説明するものではありません。
誤解3:遺伝子検査で原因が確定する
遺伝子検査やホルモン代謝の検査は、機能性医学では補助的に使うことがあります。
体の傾向を知るヒントになることはあります。
でも、それだけでPMSやPMDDの原因が確定するわけではありません。
PMS/PMDDでまず大事なのは、症状が本当に月経前に強くなり、月経が始まると軽くなるのかを記録することです。
少なくとも2周期の記録があると、かなり見え方が変わります。
検査は地図です。
でも、地図だけを見て、実際の道を歩かないと迷います。
症状の記録が、いちばん現場に近い情報です。
誤解4:サプリで一気に整えればよい
DIM、NAC、5-MTHF、メチルB12、マグネシウム、ビタミンB6。
こうした栄養素やサプリは、必要に応じて検討することがあります。
ただし、全員に同じ順番で、同じ量を入れればよいわけではありません。
特にメチル化系のサプリは、人によっては不眠、焦り、動悸、頭痛が出ることがあります。
「良いものを足せば足すほど良い」ではありません。
体が受け取れる量から、少しずつ見る。
これが大事です。
人工葉酸とは何か
ここで出てくる「人工葉酸」は、英語では folic acid です。
日本語では「人工葉酸」と表現します。
ただし、英語では少し使い分けがあります。
広い意味での葉酸全体は folate と呼ばれます。
その中で、サプリメントや強化食品によく使われる合成型を folic acid、つまり人工葉酸と呼ぶことが多いです。
一方、5-MTHFは、体内で使われる形に近い葉酸として、機能性医学で選ばれることがあります。
ただし、MTHFR多型があるからといって、人工葉酸を必ず避ける必要がある、とは言えません。
妊娠可能性がある方にとって、葉酸はとても重要です。
自己判断で葉酸を避けるのではなく、妊娠予定、薬、体質、検査結果を含めて医師と相談してください。
PMSを整理する4ステップ
STEP 1:まず2周期、症状を記録する
最初にやることは、サプリを増やすことでも、遺伝子検査を受けることでもありません。
まずは記録です。
2周期ほど、次のことをメモします。
– いつから症状が出るか
– 月経が始まると軽くなるか
– 頭痛、怒り、落ち込み、むくみ、眠気、食欲はどう変わるか
– 仕事や家庭、人間関係にどれくらい影響しているか
– 睡眠、カフェイン、飲酒、甘いもの、欠食との関係
– 鎮痛薬、ピル、漢方、サプリの使用
「毎月つらい」だけではなく、どのタイミングで何が起きているかを見ると、対策が立てやすくなります。
STEP 2:PMSに似た別の原因を確認する
PMSだと思っていたものの背景に、別の問題が隠れていることがあります。
たとえば、
– 片頭痛
– 鉄不足
– 甲状腺の問題
– 睡眠障害
– 血糖変動
– うつや不安
– 子宮内膜症
– 月経困難症
生理前に悪化するだけで、もともとの問題が別にある場合もあります。
「婦人科で異常なし」でも、体全体を見るとヒントが見つかることがあります。
STEP 3:生活の土台を整える
PMS対策では、特別な検査やサプリの前に、生活の土台が大切です。
特に見直したいのは、次の項目です。
– 朝食にタンパク質を入れる
– 欠食と砂糖の急上昇を避ける
– 月経前だけでもカフェインを減らす
– アルコールを控えめにする
– 夜のスマホや強い光を減らす
– むくみが強い時期は塩分と加工食品を見直す
– 軽い運動で血流と睡眠を整える
必要な場合は、婦人科で標準的な治療も相談します。
SSRI、低用量ピル、認知行動療法などは、PMS/PMDDで検討される選択肢です。
「標準治療か、機能性医学か」の二択ではありません。
まず安全な土台を整える。
必要な標準治療は使う。
そのうえで、栄養や代謝の個人差を見る。
この順番が大切です。
STEP 4:COMTや代謝の検査は最後に補助として見る
症状記録、鑑別、生活の土台を見たうえで、必要ならCOMTや代謝の検査を補助的に使います。
見ることがあるのは、たとえば次のような項目です。
– COMTなどの遺伝子検査
– ホルモン代謝の傾向を見る検査
– フェリチン、B12、葉酸、ホモシステイン
– 甲状腺、ビタミンD、炎症の評価
– 必要に応じた腸内環境や血糖の評価
ただし、これらは答えを一発で出す検査ではありません。
「私はこの遺伝子だからダメ」
「この検査で高いから原因はこれ」
と決めつけるより、症状と合わせて読むことが大切です。
遺伝子型は変わりません。
でも、睡眠、ストレス、栄養状態、血糖、腸内環境、薬、症状の出方は変わることがあります。
変えられるところから整える。
それが現実的なアプローチです。
まとめ
婦人科で「異常なし」と言われても、生理前の頭痛、怒り、むくみが強く出ることはあります。
それは、気のせいでも、性格の問題でもありません。
PMS/PMDDは、ホルモンの量だけではなく、ホルモン変動に対する脳と体の反応、睡眠、血糖、片頭痛、鉄や甲状腺、ストレス、エストロゲン代謝などが重なって起こることがあります。
COMTは、その中のひとつの補助視点です。
COMTだけでPMSの原因は決まりません。
遺伝子検査や代謝の検査だけで答えが出るわけでもありません。
サプリだけで根本から一気に整う、というものでもありません。
大切なのは、順番です。
まず症状を記録する。
PMSに似た別の原因を確認する。
生活の土台を整える。
必要に応じて、COMTやホルモン代謝を補助的に見る。
「異常なし」と言われたからといって、つらさをなかったことにする必要はありません。
毎月の不調には、整理できる手がかりがあります。
当院では、婦人科的な評価を尊重しながら、栄養状態、睡眠、血糖、ストレス反応、遺伝子、ホルモン代謝を総合的に確認しています。
毎月の不調で生活が大きく揺れている方は、一人で抱え込まずご相談ください。
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(文責)東京原宿クリニック院長 篠原岳











