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こんにちは、東京原宿クリニック 院長 篠原岳です。
遺伝子検査を受けて「MTHFR変異があります」と言われ、不安そうに相談にいらっしゃる患者さんが増えています。「これは治らないのですか?」「一生付き合わなければいけないのですか?」という声をよく聞きます。
しかし、MTHFR遺伝子の変異を持つ人は全人口の約60~70%——つまり10人中6〜7人が何らかの変異を持っています。それほど一般的な話にもかかわらず、「変異=病気確定」という誤解が広がっています。
この記事では、MTHFR変異とメチル化障害について科学的に正確な情報をお伝えし、「遺伝子は運命ではなく、日々の選択で書き換えられる」というメッセージをお届けします。
MTHFR遺伝子とメチル化とは何か
MTHFRはメチル化のマスター遺伝子
MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)は、体内でメチル化サイクルを支えるために必要な重要な遺伝子です。
メチル化サイクルとは、体の中で200以上の生化学反応を支える基盤システムです。具体的には、
– ストレス反応のコントロール
– 神経伝達物質(セロトニン・ドーパミン)のバランス調整
– 慢性炎症の抑制
– ミトコンドリアのエネルギー産生
– 肝臓の解毒・デトックス機能
– DNA修復と細胞の再生
– 遺伝子発現のオン/オフ(エピジェネティクス)
MTHFRの主な役割は、食事から摂る葉酸(Folate)を活性型のメチルフォレート(L-5-MTHF)に変換することです。この変換がうまくいかないと、上記すべての機能に連鎖的な影響が出ます。
最も重要な2つのSNP変異
MTHFR遺伝子には多数の変異がありますが、臨床的に特に重要なのは2つです:
– C677T変異(rs1801133): 酵素活性をヘテロ接合型で約30〜40%、ホモ接合型では最大70%低下させる
– A1298C変異(rs1801131): 単独では影響が軽微だが、C677Tとの複合型で影響が大きくなる
どちらも「欠陥」ではなく、進化の過程で獲得された人類の多様性の一部です。MTHFR変異を持つ人は一貫はしないのですが結腸がんのリスクが低いという研究報告もあります。

「生まれつき汚れ」より「後天的汚れ」が問題
2種類のDirty Gene(汚れた遺伝子)
機能性医学の遺伝子研究者ベン・リンチ博士は、遺伝子が機能しなくなることを「Dirty Gene(汚れた遺伝子)」と表現し、2種類に分けています。
① Born Dirty(生まれつきの変異): SNPによる遺伝的多型。これ自体は必ずしも問題ではなく、適切なケアで機能を補える
② Act Dirty(後天的な機能低下): ← これが最大の問題。変異のない正常な遺伝子でも、以下の要因で機能が低下する可能性があるとされています。
| カテゴリ | 主な原因 |
|———|———|
| 食事 | 精製糖質過多、B群ビタミン不足 |
| 環境毒素 | 農薬、重金属、プラスチック(BPA)、化学物質 |
| 慢性ストレス | コルチゾール過剰→メチル化基質の消耗 |
| 薬剤 | 制酸剤(PPI)、経口避妊薬など |
| 睡眠不足 | 深い睡眠不足でメチル化サイクルが停滞 |
活性化葉酸という選択肢
MTHFR変異がある方にとって、葉酸の変換能率から考えると、食品中の天然葉酸(Folate)や活性型の葉酸 L-5-MTHFを選択するという方法も選択肢として考えてもいいかもしれません。

MTHFR機能低下と関連する症状
精神・神経系症状
– うつ・不安感・気分の波: セロトニン・ドーパミンの合成が低下するため
– ブレインフォグ(思考の霧): 神経炎症とエネルギー産生の低下
– 化学物質過敏症: 解毒機能の低下による
– 不眠・睡眠の質低下: メラトニン産生経路への影響
炎症・心血管系症状
– 高ホモシステイン血症: MTHFR機能低下→再メチル化不全→ホモシステイン蓄積→血管内皮へのダメージ・心血管リスク上昇
– 慢性炎症: 抗炎症メカニズムの低下
消化器症状・ヒスタミン負荷への影響
– 腸内環境の悪化: メチル化低下→腸粘膜の修復力が低下
– ヒスタミン負荷: HNMT遺伝子(ヒスタミン分解)もメチル化に依存するため、MTHFR低下→HNMT低下→細胞内外でのヒスタミン過剰という連鎖が起こることもあります

科学的根拠に基づくアプローチ
STEP 1: 2週間の「ソーク&スクラブ」で土台を整える
特定のサプリを加える前に、まずすべての遺伝子が快適に働ける基礎的な環境を2週間整えることをお勧めします:
1. 加工食品の排除: 加工食品を含む食材を外す
2. 睡眠の質を改善: 深い睡眠を7〜8時間確保する
3. 環境化学物質の見直し: 洗剤・香料・プラスチック容器などの日常毒素を減らす
4. 血糖値の安定化: タンパク質・食物繊維を食事の前半に食べる
5. 適度な運動: ただしオーバートレーニングはコルチゾール過剰でメチル化を消耗させる
STEP 2: 腸内環境を整える(すべての土台)
診察室で患者さんに繰り返しお伝えしているのが、「遺伝子が正しく働くためには、腸内環境という土台が必要」ということです。
腸内環境が乱れると:
– 腸粘膜からのビタミン(特にB群)の吸収が低下する
– リーキーガット→LPS漏出→慢性炎症→メチル化サイクルの消耗が起きる
– 腸内細菌自体がB群ビタミンを産生するため、腸内環境が悪いとメチル化に必要な材料が不足する
食物繊維・発酵食品・プロバイオティクスを意識した腸活は、遺伝子ケアの基盤です。
STEP 3: メチル化サイクルを支える栄養素を整える
食事で積極的に摂りたいもの:
– 天然葉酸(Folate): ほうれん草、ケール、アスパラガス、ブロッコリー、枝豆
– ビタミンB12: 牛レバー、卵、魚、肉類(植物性食品からは摂れないため動物性食品が重要)
– ビタミンB2(リボフラビン): MTHFR酵素の補因子として必須。卵・乳製品・レバーに多い
– マグネシウム: 体内の300以上の酵素反応に必要。緑葉野菜・ナッツ・豆類に含まれる
サプリメント(医師に相談の上):
– L-5-MTHF(活性型メチルフォレート): 場合によってはこちらを選択
– メチルコバラミン(活性型B12): 生体利用率が高い
– ⚠️ 少量から開始し、過剰投与には注意が必要
多くの場合、この2週間だけで「なんとなく体が軽くなった」「頭がすっきりしてきた」と感じていただけます。
まとめ
MTHFR変異を持っていても、それはあなたの運命ではありません。
今日から実践できるポイントをまとめます:
1. 60~70%が持つ変異——珍しいことでも恥ずかしいことでもない
2. 問題の多くは後天的な生活習慣——食生活・ストレス・腸の荒れが主犯
3. 医師と相談しより働きやすい栄養素を選択することも一つの案です。
4. 腸内環境を整えることがすべての遺伝子ケアの土台
5. 遺伝子検査で自分のプロファイルを知ることで、より精度の高いアプローチが可能
「遺伝子はあなたの運命ではない(Your genes are not your destiny!)」——これは機能性医学の核心メッセージであり、私が診察室で患者さんに繰り返しお伝えしている言葉でもあります。
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免責事項
▼ 免責事項
この情報は医療・健康に関する情報提供を目的としたものです。
特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。
体調に関するご判断は必ず医療機関にご相談ください。
(文責)東京原宿クリニック院長 篠原岳











