分子栄養学

テアニンだけで眠れない人へ——神経の興奮・血糖・睡眠リズムを整える4ステップ

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篠原 岳

東京原宿クリニック院長 医学博士・総合内科専門医・呼吸器内科指導医・アレルギー専門医・臨床分子栄養医学研究会指導認定医・キネシオロジスト・宮澤医院栄養外来担当 さまざまな不調を、分子栄養学と現代医療とキネシオロジーを合わせて改善させようとしている。 詳しいプロフィールはこちら

テアニンは悪くない。けれど「それだけ」では足りないことがあります

こんにちは、東京原宿クリニック 院長 篠原岳です。
「テアニンを飲むと少し落ち着く」
「でも、寝つきはよくならない」
「夜中に目が覚める」
「朝起きても、脳が休まった感じがしない」
こういうご相談は少なくありません。
最近はSNSでも、L-テアニンが大きく話題になります。
「脳波が変わる」「GABAが増える」「合法的にリラックスできる」など、かなり強い言葉で紹介されることもあります。
たしかに、テアニンは緑茶に含まれるアミノ酸で、ストレス感や睡眠の質に関する人での研究もあります。2019年のNutrients誌の小規模ランダム化比較試験では、健康成人30人にL-テアニン200mg/日を4週間投与し、ストレス関連症状、主観的な睡眠指標、認知機能の一部に変化が報告されています。
2020年のPlant Foods for Human Nutrition誌の系統的レビューでは、200〜400mg/日のL-テアニンが、主にストレス状況下の不安や緊張感を下げる可能性が整理されています。さらに2025年の睡眠アウトカムに関する系統的レビュー・メタ解析でも、主観的な入眠潜時や睡眠の質への有用性が示唆されています。ただし、純粋なL-テアニン研究の不足や、適切な用量・期間がまだ決まっていない点も指摘されています。
つまり、テアニンは「ただの気休め」と切り捨てる必要はありません。
ただし、ここで大事なのは、テアニンは睡眠薬ではないということです。
テアニンで少し静かになっても、夜までカフェインが残っている、夕食後から血糖が乱れている、マグネシウムやB6が不足している、朝の光が足りない、寝る直前まで脳が警戒モードになっている。こうした条件が重なると、眠りは安定しません。
これは、車でたとえるとわかりやすいです。
テアニンは、ブレーキを少しなめらかにしてくれる部品のようなものです。しかしアクセルが踏みっぱなしなら、車は止まりません。睡眠で見るべきなのは、テアニン単体ではなく、GABA系というブレーキ、グルタミン酸系というアクセル、血糖という燃料、そして体内時計という交通整理です。
この記事では、「テアニンを飲んでも眠れない人」に向けて、神経の興奮・血糖・睡眠リズムを機能性医学的にどう整理するかを4ステップで解説します。

神経の興奮・GABA系・テアニンとは何か

GABA系は「ブレーキ」、グルタミン酸系は「アクセル」

GABAは、脳内で代表的な抑制系の神経伝達物質です。
比喩的に言えば、神経の過剰な興奮を落ち着かせるブレーキ役です。
一方、グルタミン酸は代表的な興奮系の神経伝達物質です。
学習、記憶、集中、覚醒に関わる大切な物質ですが、過剰に働くと、頭が冴えすぎる、音や光に過敏になる、寝ようとしても脳だけ止まらない、といった状態につながることがあります。
大切なのは、グルタミン酸が悪者ではないということです。
アクセルがなければ、日中に考えることも、動くこともできません。
問題は、夜になってもアクセルが戻らず、ブレーキ側の働きが追いつかない状態です。
グルタミン酸
→ 神経の興奮
→ 交感神経が抜けない
→ 寝つきが悪い
→ 睡眠不足
→ 翌日カフェインと糖質で持ち上げる
→ 血糖やストレス反応が乱れる
→ さらに眠りが浅くなる
このループでは、「眠れないからリラックスサプリを足す」だけでは追いつきません。

テアニンは「ブレーキを直接増やす薬」ではありません

L-テアニンは、緑茶に含まれるアミノ酸です。
構造的にはグルタミン酸に似ており、脳の興奮・リラックスに関わる経路への影響が研究されています。
一部の研究では、テアニン摂取後にリラックス時にみられるα波の変化が報告されています。2016年のNutrients誌のランダム化クロスオーバー試験では、L-テアニンを含む栄養飲料が、急性ストレス反応や安静時のα活動に影響する可能性が示されています。ただし、これは複合飲料での研究であり、α波の変化をそのまま「テアニン単独で眠れる」と解釈するのは行きすぎです。
ただし、SNSでよく見る「テアニンを飲めばGABAが増えて、セロトニンもドパミンも上がる」という説明は、かなり単純化されています。
人の体では、神経伝達物質は単純な足し算では動きません。GABA、グルタミン酸、コルチゾール、インスリン、メラトニンは、互いに影響し合います。
だからこそ、テアニンを使うなら、「何を落ち着かせたいのか」を見極める必要があります。
日中の緊張なのか。カフェインの効きすぎなのか。血糖変動なのか。寝る直前の思考過多なのか。あるいは、不安症、甲状腺、貧血、睡眠時無呼吸などの別問題なのか。
ここを整理せずにサプリだけを増やすと、体感が不安定になります。

経口GABAは「効く・効かない」の二択ではありません

GABAサプリについても、誤解が多い領域です。GABAは脳内の重要なブレーキですが、口から摂ったGABAがどの程度、血液脳関門を越えて脳内GABAとして働くのかは、長く議論されています。
2020年のFrontiers in Neuroscienceの系統的レビューでは、経口GABAのストレス・睡眠への研究を整理し、ストレスに関しては低〜中等度、睡眠に関しては限定的なエビデンスとしています。また、人でGABAが血液脳関門をどの程度通過するかについては、まだ明確ではないとされています。
GABAサプリを完全に否定する必要はありません。一方で、「GABAを飲めば脳のGABAが増える」と断定するのも正確ではありません。機能性医学では、神経が過剰に興奮しにくい体内環境として、マグネシウム、B6、血糖、カフェイン、腸内環境、睡眠リズムを見ます。

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テアニンについてよくある誤解

誤解1:「テアニンを飲めば眠れる」は言いすぎです

テアニンは、緊張感やストレス反応をやわらげる可能性があります。ただし、強制的に眠らせる薬ではありません。
たとえば、寝る前にテアニンを飲んでも、夕方以降にコーヒーを飲んでいる。
寝る直前まで仕事のメールを見ている。
夜食や甘いものを食べて、血糖が上下している。
この状態では、テアニンは「騒がしい部屋で小さな音量のヒーリング音楽を流す」ようなものです。悪くはないけれど、部屋の騒音そのものが大きすぎるのです。
まず見るべきは、カフェイン、アルコール、夜の強い光、寝る前のSNS、空腹や血糖変動、痛み・かゆみ・鼻づまり・咳など、神経を興奮させる入力です。
眠れない理由が複数ある場合、「足すサプリ」より先に「邪魔しているもの」を減らす方が効率的なことがあります。

誤解2:「天然だから誰でも安全」ではありません

テアニンは比較的使いやすい素材として扱われることが多いですが、すべての人に同じように合うわけではありません。
眠気が強く出る方もいれば、夢が増える、朝ぼんやりする、日中の集中が落ちると感じる方もいます。睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、降圧薬などを使っている方、妊娠中・授乳中、小児、てんかん、精神疾患の治療中の方は、自己判断での追加は避けてください。
「天然」は「無条件に安全」という意味ではありません。体に入るものは、薬であってもサプリであっても、文脈を見て使う必要があります。

誤解3:「眠れない=GABA不足」と決めつけない

眠れない原因は、GABA不足だけではありません。
実際には、睡眠時無呼吸、甲状腺、鉄不足、更年期、うつ病・不安症、慢性疼痛、アレルギー・鼻炎・ヒスタミン、逆流・咳・喘息、血糖変動、薬剤の影響などが隠れていることがあります。
特に、いびき、日中の強い眠気、起床時頭痛、動悸、体重減少、強い不安、急な不眠がある場合は、サプリより医療機関での評価が優先です。
GABAという言葉は便利ですが、便利な言葉ほど、すべてを説明しているように見えてしまいます。睡眠は、ひとつの成分ではなく、神経・ホルモン・血糖・呼吸・炎症・生活リズムの総合点です。

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科学的根拠に基づくアプローチ

STEP 1:まず「いつ眠れないか」を分ける

最初に行うのは、サプリを増やすことではありません。
睡眠の崩れ方を分けることです。
次の4つを、1〜2週間だけ記録してください。
1. 寝つきが悪い:布団に入ってから30分以上眠れない
2. 中途覚醒:2〜4時に目が覚める
3. 早朝覚醒:予定より早く目が覚めて再入眠できない
4. 睡眠時間はあるのに疲れる:朝から頭が重い
同時に、カフェイン、アルコール、夕食時間、夜食、運動、入浴、寝る前のスマホを簡単にメモします。
寝つきが悪い人は、夜の光・仕事・カフェイン・思考過多が関係していることがあります。
中途覚醒が強い人は、アルコール、ヒスタミン、逆流、咳、睡眠時無呼吸、血糖変動などを考えます。
朝疲れる人は、睡眠時無呼吸、炎症、甲状腺、貧血、低フェリチン、HPA軸リズムの乱れも見ます。
ここを分けずに「眠れないからテアニン」とすると、当たり外れが大きくなります。
必要に応じて、睡眠アプリ、スマートウォッチ、CGM、血液検査、唾液コルチゾール検査などを補助的に使うことがあります。ただし、これらは診断確定ではなく、パターン整理の道具です。
なお、不眠が週に何度も続く、日中機能に支障がある、数週間以上続く場合は、サプリだけで対応せず、睡眠時無呼吸などの評価や、CBT-Iを含む標準的な不眠治療も検討してください。

STEP 2:神経のアクセルを下げる

次に見るのは、グルタミン酸側、つまり興奮の入力です。
まず優先順位が高いのはカフェインです。代謝には個人差があり、朝のコーヒーでも夜まで影響が残る方がいます。眠りが浅い人は、2週間だけ「カフェインは午前中まで」にして反応を見ます。
次に、夜の情報刺激です。寝る前のSNS、ニュース、仕事の返信、動画の連続視聴は、脳に「まだ危険を見張れ」という信号を送ります。
おすすめは、寝る60分前だけスマホを別室に置くことです。完璧なデジタル断食でなくて構いません。
栄養面では、マグネシウムとB6を確認します。
マグネシウムは神経・筋肉・血糖調節などに関わるミネラルで、不足が疑われる場合は睡眠や緊張感の文脈でも確認します。2021年の高齢者不眠に関する系統的レビュー・メタ解析では、入眠潜時が短くなる可能性が示されましたが、対象研究は少なく、エビデンスの質は低〜非常に低いとされています。
つまり、マグネシウム単独で不眠を治す根拠はまだ限定的です。サプリで使う場合は、下痢などの胃腸症状、腎機能、薬との相互作用を確認しながら少量から検討します。実用上は、比較的使いやすい形としてマグネシウムグリシネートなどを検討することがあります。
B6は神経伝達物質の合成に関わる栄養素です。不足が疑われる場合は、食事内容や検査を含めて評価し、必要に応じて補正を検討します。機能性医学ではP-5-P(ピリドキサール-5-リン酸)を使うこともありますが、高用量・長期使用ではしびれなどの末梢神経障害が報告されているため、自己判断で増やし続けないことが大切です。

STEP 3:血糖変動を見直す

テアニンを飲んでも夜中に目が覚める方では、血糖の上下を見落としていることがあります。
特に、糖尿病治療薬を使っている、夕食を抜く、飲酒が多い、極端な糖質制限をしている、夕食後に甘いものが多い、といった背景がある場合は、夜間の低血糖や血糖変動を考えます。低血糖では、動悸、発汗、不安、震えなどの自律神経症状が出ることがあります。
ただし、糖尿病治療中ではない一般成人で、本当の低血糖が頻繁に起きているとは限りません。症状だけで決めつけず、背景条件や必要な検査と合わせて判断します。
食事のポイントは、夜に糖質をゼロにすることではありません。低血糖になりやすい方が極端な糖質制限をすると、夜間に交感神経が上がることがあります。
夕食では、タンパク質、食物繊維、良質な脂質に加えて、米・芋・雑穀などを体質に合う範囲で組み合わせます。
夜中に空腹で目が覚める人、夕食後に甘いものが欲しくなる人、朝に強い疲労がある人は、夕食内容と時間を見直します。
必要に応じてCGMで食後高血糖や夜間の血糖変動のパターンを見ることもあります。ただし、CGMは低血糖の確定診断ではなく、パターン把握の補助です。

STEP 4:テアニンは「少量・目的別」に使う

最後に、テアニンの使い方です。
テアニンは、全員が寝る前に飲むべきサプリではありません。目的によって使い方が変わります。
日中の緊張が強い人は会議や作業前に、カフェインでそわそわする人はコーヒー量を減らしたうえで、寝る前の思考過多が強い人は夕食後から就寝前に少量を検討することがあります。
ただし、最初から高用量にしないことが大切です。少量から開始し、眠気、夢、朝のぼんやり感、血圧、胃腸症状を確認します。
2019年のNutrients誌の研究では200mg/日が使われていますが、これは「全員が200mg必要」という意味ではありません。研究用量と実臨床の開始量は分けて考えます。
また、テアニンで眠れないからといって、次々にGABA、メラトニン、マグネシウム、アシュワガンダ、CBDを重ねるのはおすすめしません。何が効いて、何が合わないのかがわからなくなるからです。
おすすめは、1つずつ、2週間単位で、睡眠日誌と一緒に見ることです。
Week 1:カフェインを午前中までにする
Week 2:寝る60分前のスマホを減らす
Week 3:夕食のタンパク質と炭水化物バランスを整える
Week 4:必要ならテアニンやマグネシウムを少量から検討する
この順番にすると、サプリが主役ではなく、体のリズムが主役になります。

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まとめ

テアニンは「入口」。本丸は神経とリズムの整理です

テアニンは、ストレス感や睡眠に対して研究されている成分です。
うまく使えば、緊張をやわらげる助けになることがあります。
しかし、眠れない理由をすべて「GABA不足」にまとめてしまうと、見落としが増えます。
今日のポイントを整理します。
GABA系は脳のブレーキ、グルタミン酸系は脳のアクセルとして働く
– テアニンは睡眠薬ではなく、リラックス反応を支える可能性がある素材
– 経口GABAは研究されていますが、脳内GABAが直接増えると断定はできない
– 夜の不眠では、カフェイン、夜の光、血糖変動、Mg/B6不足、睡眠時無呼吸も見る
– サプリは足し算ではなく、目的を決めて少量から検証する
眠れないのは、意志が弱いからではありません。
神経の興奮、体内時計、血糖、ストレス反応が同時に乱れているだけかもしれません。
サプリを探し続ける前に、まず自分の睡眠の崩れ方を言語化してみてください。
そこから、整える順番が見えてきます。

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(文責)東京原宿クリニック院長 篠原岳

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